断章のグリム〈2〉ヘンゼルとグレーテル

2013年4月18日

ヘンゼルとグレーテル読了。

童話の解釈はいろいろありますが、それをモチーフにこういったグロテスクなストーリーを展開させられるとは。

神の見た悪夢が現実を浸食するとは、なるほど、とびきり凶悪で醜悪なわけです。前巻の鳩の描写に引き続き、今回も文章に鳩が出てきて、同じ展開かと思ったら見事に斜め上。題材にされた童話にも、ともに鳩が描かれていたからと、そんな理由で二番煎じはないようです。さすが。でも、ちょっと慣れたかな?

それはそれとして、何が怖いって、主人公とヒロイン雪乃さんの関係が絶妙で、今にも崩れそうで怖いです。冒頭で仄めかされたように、主人公の保つ断章の力が、相手を理解した後に拒絶することで、その相手を滅ぼすわけで、理解されてしまった側としては、すなわち命を主人公の気まぐれ一つに左右されてしまうこととイコール。割り切った仲間関係とかならともかく、こと、恋愛ごとに限っていえば、ほんの些細なすれ違いから放ってしまった言葉で、相手を殺してしまう可能性もあると。それを互いが理解し、自覚した上で付き合うなんてのは、まさに正気の沙汰ではなく、破滅が決定づけられた物語ではないかとも錯覚させられてしまいますね。

物語の決着は割とあっさり目。もっとも主人公が即死系の能力を持っているので、そこに大立ち回りのバトル分は期待できませんが、作者が描こうとしているのは、そういった直接的なバトルではなく、人の正気と紙一重の狂気が裏返ってしまったときに露見するであろう、醜い部分なのではないかと勘ぐってしまいます。

まぁ、でも、こういう救いようのないお話の読後のやるせなさも割と好きです。