空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly

2013年4月18日

空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly

読了。

これは素晴らしい。『ご愁傷さま二ノ宮くん』の混沌ぷりから想像する、鈴木大輔テイストから大きく逸脱した良作。あんまり小難しいことをこねくり回して言葉にするより、こういう頭の悪い少年が、感情を直にぶつけたりする方が私は好きだな。そういう意味では空のキャラクターは、大変よろしい。作品が一人称で描かれているので、冒頭~中盤の一人語りが冗長すぎてうるさくも感じたけれど、終盤~エピローグでの展開を見ると、マシンガンの用の速射で発せられた空の言葉のいくつかが核心を突いていたり、そこで返されるタマの無言を思い図ると、結構痛々しかったりと、構成からして狙ってやってるんじゃないかって思えてくるくらいの絶妙さだったり。

家出の隠れ家を巡る、顔も知らぬ誰かとの一進一退の攻防から、あんなオチにまで大きなストーリーの破綻もなく持ってくるとは脱帽です。舞台の時節が秋だったりと、発売からしばらく時間を空けてしまいましたが、情景が容易に想像できるような田舎住まいの私としては、タイミング的にはかなりバッチリな時期に読めた感が強いです。
相変わらずレーベルの名前とはかなり違った内容の作品ですが、一巻完結の短編としても非常に高いレベルで完成された一冊。二ノ宮くんはともかくとして、この方向性の短編作を今後も読んでみたいですね。