ミミズクと夜の王

ミミズクと夜の王読了。

第13回電撃大賞 大賞受賞作。とても優しいお話。おとぎ話と言い換えてもいい。電撃文庫というレーベルから出版するにはなんとも毛色の違った作品ですね。

人でありながら人の名を持たないミミズクと、夜を統べる魔王でりながら、人の名を捨てたフクロウ。そして、国を統べる王と、聖剣を携えた聖騎士と剣の巫女。ファンタジックな要素がこれだけ揃っていながら、その舞台・背景を深く掘り下げるよりも、そこに生きる人々の感情を描く。絵本として読んでも楽しめる作品であり、ライトノベルというよりも児童文学という土俵で勝負しても十分に高い評価が得られるのではないかなぁ。

作品を通してミミズクが感じ、得たもの。居場所のなかった彼女が、何も望むことなく生きてきた彼女が、自ら望んで選んだ場所。人という存在に絶望し憎悪し、夜を選んだフクロウ。そんなふたりの、ほとんど交わす言葉もないながらも、しっかりと果たされていた優しい気持ちの在りように、ただただこちらも心が温かくなりました。