レジンキャストミルク〈6〉

2013年4月18日

レジンキャストミルク 6 (6)読了。

いよいよ佳境の物語。帰還を果たした実父・樹と母の名を持つ〈虚軸〉、掠われた芹菜、と状況は悪化の一途。

それでも前半は晶や硝子の苦悩を交えながらも、ほのぼのテイスト。感情を獲得した硝子の反応がいちいち初々しくて、コメディ調のシーンはにやにやが。初夜の件はお約束ながらも嬉し恥ずかし!

そして、表紙を飾ったネア先生。前巻の強烈なキャラ立ちに続いて今回は勝負服で大活躍。この作者と絵師、なんともノリノリ。シリアスなシーンのはずなのに、この先生が出てくるとぶち壊しですよ(笑)

しかし、樹に対して絶大なコンプレックスを描いているのか、彼に対峙した晶の気圧されっぷりは見てられないですな。もう、そういうふうに過去から教育されてきたとしか思えない。作中の描写だけだと、どれだけ樹が天才なのかとか分かりづらい部分も多く、単に人の話を聞かない尊大な自己中としか映らない。むしろ硝子と同位の存在として、機械と化した母・鏡の存在・能力の圧倒的さの方が描写としてはインパクト大。前巻の〈全一〉の絶対的な能力をすら、あるいは凌ぐ最終的な世界の顕現。いやはや、これをどう退けるのか、別の手段を講じるのか、〈全一〉の能力が通用しない可能性を考えると、今後の展開は今まで以上に絶望的なものになりそうな予感。

自身の出自に心を折られた晶に対して、硝子の強さが対照的に光ったエピソード。感情を得たことを故障と切って捨てる樹や自ら進んで捨て去った鏡に対して、人間に近付いた硝子の成長が勝利の鍵となるのか? 日常から非日常へと身を置く場所を変えた晶の変化が、弱さや優しさの獲得ならば、それによって深まった絆は純粋な力とは違った強さの形。その結果迎えたエピローグのラストシーンはやたらと前向きで希望を抱きそうになるけれど、さらにどん底に突き落とされそうで、戦々恐々な部分は少なからずあるんですよねえ。