吉永さん家のガーゴイル〈12〉

2013年4月18日

吉永さん家のガーゴイル 12読了。

しっかり恋愛ものをしている第12巻。演劇部のエピソードからいい感じになっていた和己と桃の関係は、和己の受験間際、桃の部長就任が重なるタイミングで微妙な雰囲気に。そして同時に来日した、和己の親友・範太の師匠である画家・チャックが、過去に描いた絵に隠された秘密に気づいた怪盗百色も加わり、相変わらずの大にぎわい。

善と悪という明確な二項対立から、少し異なる事情を持ったキャラクターの登場。過去に犯した罪の贖いを現在どのようにするのか、自動人形であるガーゴイルの理解の範疇を超えた感情の機微。作中の時間が進むにつれて、まるで和己や双葉、ガーゴイルの成長を促すかのようなエピソードが重ねられて、そういった意味ではこれまでの単なる優しいだけの世界ではなく、時に厳しい決断を迫られるということを教えてきます。

物語の中心となった、和己と桃の恋愛模様は、不器用すぎて幼くて、微笑ましいながらも恋愛の暗い側面にまで踏み込んで描いていたりとエピローグを見ればハッピーエンドでよいのですが、それまではなかなかきつい部分もあったり。

時間の進みを作中内の登場人物の成長で実感させる手管は見事ですが、こと、このシリーズにおいては、どこまでも「ちょっといい話」でハートフルな展開でいてくれても良かったような気も。いや、普通にいい話なんですけど。