ムシウタ〈08〉 夢時めく刻印

2013年4月18日

ムシウタ 8 (8)読了。

うあああああ、作者の仕掛けに見事に引っかかった。そりゃもう気持ちいいくらいに。
でも、その分物語の構造がやや難解になってた印象がありますね。違和感の正体を確かめるために、何度も前半を読み返したり。

これまでのシリーズに登場したキャラや、『ムシウタ bug』のとあるエピソードが大きく本編に影響していたりと、いよいよこの作品もクライマックスなんだなあと実感させられます。キャラが増えすぎてるのと、個性的な名前が多いのとで、久方ぶりの登場をした人物がどんな役回りだったのか思い出せませんでしたがorz

そんなわけで、大助が主人公らしく全編出ずっぱり。厳密にはそうじゃないかもしれないけれど、本巻はまさに大助という人物の今と未来を語るための重要な位置づけとなりそう。虫憑きとしての運命は、誰も彼も例外なくその夢を食らいつくし、不幸な結末に導こうとするけれど、それに抗うべく前に進む人たちも確かにいる。誰かに会いたいという純粋な思いと願いが、満身創痍の身体を突き動かし、限界を超えても膝を着かない。信念とか使命感とか、そんな大仰なことでもなく、そこにあるのは少年らしい、あるいは少女らしい純粋な気持ちだけだったり。

今回も、新たに登場した虫憑きの少女・萌萌は悲劇的な結末を迎えたかに見えるけれど、悲壮感とともに想いを遂げたという満足感も感じられて、素直に美しい最後だったと思えたり。それでも避けられない別れが現実としてあるというのはやはり悲劇なのでしょうけれど。

虫憑きとして、人間として、大助が自分自身でいられる時間はどんどん削られていってるようで。詩歌との再会をただひたすらに望む彼が、「むしばね」の中枢にいる彼女にどうやって近づくのかとか、特環の追っ手の動向とか、前途多難。
そして、ついに国外からの日本への干渉の可能性すら示唆されて、この先一体どうなってしまうのやら。過去と現在の物語が、一つの着地点に向かって収束しているように感じられて、非常にわくわくしてきます。