デモンパラサイト―魔獣の姫は、血を望む。

2013年4月18日

stars 王道を進む異能バトル

テーブルトークのリプレーノベルなども出版されているマルチ展開作品の小説版。

どこかで見た設定が多いのは、TRPG版の影響が濃いからなのかな?

謎の施設「ホーム」から辛くも逃げ出したヒロイン・桜子と、彼女の異母兄の主人公・葵の、突然の出会いとなし崩し的な命の(一方的な)共有関係。不良然としながらも、基本良い人の葵のお人好しさにつけ込むような、どちらかといえば策士的な方法で彼を守り手に仕立て上げた桜子の、けれど進んで望んだわけではないという微妙な罪悪感とかは上手く描かれていますが、逆に葵が桜子を護る覚悟を決めるに至る部分の描写が弱すぎて唐突感は拭えませんね。母親との思い出にキーがあったりするパターンと脳内補完がかかるのですが、その描写の少なさがどうしても足を引っ張るのかな、と。

敵方で出てきた4人の異能者たちも、大物感が感じられないのでバトル自体もイマイチ盛り上がらなかったのかな。セリフではっきりと小物と分かるっていうのは、非常にストレートではありますが、こういう一癖も二癖もありそうなキャラを予感させる世界観の中だと、薄っぺらく感じてしまいますね。

あとは、根本の寄生生物との共生関係というのが、荒木飛呂彦の名作、バオー来訪者を彷彿とさせて。ってこちらは23年も前の作品かー。今の中高生だと知らない人も多だろうから、私みたいに既視感を得る人はあんまりいないのかもしれないなあ。

hReview by ゆーいち , 2007/06/09