吉永さん家のガーゴイル〈13〉

2013年4月18日

stars 吉永家に迫るミズチの魔手 でもやっぱり御色町は平和が一番

ミズチの首領となったレイジは、ガーゴイルへの復讐を諦めていない。百色からの警告は、それが吉永家の人々への危険が迫ることすらも含んでいた。警戒を深めるガーゴイル。しかし、そんな彼の警戒網をかいくぐり、完璧に吉永家に侵入して見せたミズチの尖兵は、双葉と同じ顔を持った小さな小さな人形のような妖精・ピクシーで……。

レイジという存在それ自体が、『ガーゴイル』の世界においては異端。あってはならない明確な「悪」で「敵」。そんな彼が『おるたなてぃぶ』と本編の両方に関わってくるから面倒なことこの上ないですね。『おるたなてぃぶ』は次回で一応完結らしいので、ミズチを巡る騒動自体も、某少年漫画誌のように引きずられまくることはないと思われるので一安心ですが。

そんなわけで、ミズチが偵察役として送り込んだピクシーが、吉永家に居着いてから始まる一騒動の顛末記。敵でありながら、家族として扱われているピクシーに対して、門番であるという役割に固執するガーゴイル。役割を果たそうとしたときに、ピクシーのような矛盾した存在が相手となったとき、悩んで出した答えは簡単で当たり前、でも、それは自分を吉永家の家族と見なすことができていなかったガーゴイルには出すことができなかったものでした。パパさん、ママさんの言葉足らずながらも確かな愛情でもって接せられたガーゴイルやピクシーが、真に吉永家の家族になるためのエピソードでしたね。最後はこういうハッピーな終わり方をしてくれるだけ良いのですが。

物語がスタートして作中の時間は2年が経過。短いようで長い時間の経過は、人間だけでなく、ガーゴイルたちの内面もすら確かに変化させてきてます。役目を果たすための存在でしかなかったガーゴイルが、自分で考え、為したいこと成すことができるようになってきた、その変化こそが、御色の街で暖かく育まれてきた、人々の愛情の結実であると思うのです。

hReview by ゆーいち , 2007/11/15

吉永さん家のガーゴイル 13

吉永さん家のガーゴイル 13 (13) (ファミ通文庫 た 1-1-13)
田口 仙年堂
エンターブレイン 2007-10