Fate/Zero〈4〉-煉獄の炎-

stars 物語は絶望のグラウンドゼロへ! Fate/stay night 前史完結

『Fate/stay night』の舞台を遡ること10年。第4次聖杯戦争の真実がついに明かされる完結編。

長いようであっという間の1年でしたね。この4冊のシリーズのリリースは本当に毎回楽しみでした。本編をプレーしていることが前提とはいえ、奈須きのことは異なった書き手・虚淵玄の手による公式な二次創作ともいうべき Zero。けれど、これは確かに Fate の世界を構築する欠片のひとつでした。

残されたサーヴァントは4名。セイバー・ライダー・バーサーカー、そしてアーチャー。彼らの壮絶な生き残りと聖杯を賭けた戦いは最後の舞台へ。苛烈を極めるサーヴァント同士の戦いと、その裏で行われるマスター同士の戦い。それぞれの信念だったり野望だったり、あるいは夢や理想だったり、そのぶつかり合いと結末としての死。

サーヴァント同士の戦いは、どれも熱く燃えるものがありますが、セイバーさんは負けが確定しているせいか、やはりあまり良いところがなかったですね。因縁が仄めかされていたバーサーカーとの対決も一方的にやられて、運良く望まぬ形で勝利を拾ったという感じだし、ライダー戦は結局決着付かず、アーチャー戦に至ってはもう……。

もともと結末が決まっていた物語で、切嗣とセイバーのコンビの戦いは、お互いの望みが叶えられることなく、互いの心も通うこともなくという、ある意味最悪の結末であり、それを描くためにこそ書かれたような作品が本作であるというわけだから宜なるかな。むしろ、その豪放さと破天荒さでやたらと舞台を引っかき回してくれたライダーとウェイバーのコンビの活躍の方が印象に残ってしまいました。小物感たっぷりだったウェイバーくんが、物語終盤で見せてくれた覚悟などは胸が熱くなりますね。結果として聖杯戦争に破れはしたものの、彼が望んでいた何かは得られたように思いますね。

アーチャー──ギル様──と言峰のコンビは、本編以上に極悪な、けれども悪役としてはなかなかの威厳。ギル様、本編以上に活躍してて、彼本来の我様節全開でなんとも頼もしい。

そして、正義の味方になり損ねた切嗣。彼の生涯は戦いに埋もれ、近しい人を失い、愛する人すら切り捨て、何もかもを失って最後の希望としてすがった聖杯にすら、最悪の形で裏切られ、苦しみに満ちただけの人生に見えてしまいます。が、戦いが終わり、燃えさかる冬木の街の中で、彼がただひとり助けることができた少年に見せた泣きそうな、まるで自分が救われたかのような笑顔の意味をこの物語を経た今思うと、なおのこと切ない味わいを感じてしまいます。

そして Fate 本編へ続くためのエピローグ。士郎との会話の中で、切嗣が抱いた思いの深さはいかばかりか。正義の味方に憧れ、そのやり方を間違え、ついにはその道半ばで諦めてしまった切嗣の跡を継いだ少年が、彼なりの応えに辿り着くのはまた別のお話。

とにかく、Fate 本編を補完する意味でも、単体の物語としても非常に楽しめました。この素晴らしい物語をありがとう。

hReview by ゆーいち , 2007/07/27

Fate/Zero〈4〉-煉獄の炎-

Fate/Zero〈4〉-煉獄の炎-
虚淵玄
Nitroplus/TYPE-MOON 2007-12-29