繰り世界のエトランジェ 第2幕 偽りのガジェット

2008年8月18日

stars 悲しみの時間が終わったら、また立ち上がるのだ、少年。だから……負けるなよ。

“蠱遣い”との戦いの後、透真の元に届けられた母からの手紙。思い出の中の、憧れであった彼女の姿とは大きくかけ離れた行為に苦しめられる透真は、統堂本家へ向かう。本家を訪れた透真の眼前に広がる信じがたい光景。彼と冥を捕らえようとする謎の組織〈山田太郎〉。捕らえられ、操を呼び寄せるエサとして使われた透真を助けたのは仮面の男・雷斗と軍服の女性・闇宮礫。街に出現した“化け物”、吸血鬼の出現と、カタナの仇敵「神の手」の狙い、再び怪異が集う中、透真の信じる母の姿は見えない。

前巻の引きはなかなかに衝撃的だったんですが、本巻の引きも負けず劣らず。まぁ、これ以上続けられるとワンパターンと思いそうなので、次巻では真相に近づいてほしいとは思いますが。

正義の味方にこだわり続ける透真、その思いの根源である母の教えは、今の透真を形作るそのものと言っても良くて、そんな母を悪と見なし排斥しようとする組織〈山田太郎〉 ((なんなんだ、このネーミング(^^;))にむき出しの敵愾心を抱き、透真自身は自分の信念を曲げることなく正義を全うしました。彼の境遇、異能の力、人間と“化け物”の境界で揺れる心と、透真の立ち位置はかなり悲惨なものなのですが、透真の信じる正義というお題目を叶えるために、なんだか名もなき一般人が大量に死んでるんですが……。透真自身も、彼の周囲の異能たちも、透真を普通と評しますが、すでに普通という感覚からは彼の神経はかけ離れてきているんじゃないのかなあ。

さて、最後に明かされた母と父の秘密だったり、冥の出自だったり、このまま全てが明らかにされると鬱展開まっしぐらな感じがするのですが、どこかに救いはあるのですかね?

そして、なにやら大きな目的を持って動いているっぽい「神の手」とカタナの因縁は、結構置いてけぼりなんですが、ちゃんと回収されるんでしょうか? もう、この作品、誰がヒロインなんだか分からなくなってきました。

hReview by ゆーいち , 2008/02/10