ツァラトゥストラへの階段〈2〉

2008年8月8日

stars 出口はこの画面の向こうにあります ──Overload Game Start

福原の元へダンスパーティへの招待状が届いた。ビリオンゲーム主催者によるイベントと銘打ったそれに参加した福原は、そこで出会った秋島カレンと共に新たなゲームに参加することになる。チェスをモチーフにした『Overload Game』。出口を捜すだけの危険の少ないボーナスゲームと、ゲーム開始地点で福原を待っていた舞に説明を受けるが、本当のゲームのスタートはまだ先のことだった。

パルスの能力に具体的な特性と設定が加わって、より『ゲーム』を題材にした作品らしくなってきた第2巻。福原の性格がやたらとぶれてる気がするのは、パルスの影響なのかどうなのか。

今回のゲームも、表のルールとそのルールの裏に潜んだ真の意味での勝利条件というものが、また皮肉が利いていて、福原を初めとしたゲーム参加者それぞれが取る行動が、流動的にゲームの趨勢を変えていくのが面白いですね。大多数の登場人物は、まさに記号的な役割しか担っていなくて、実際に動いているのは福原や舞を初めとした数人なのですが、これまたモニタを通してゲームを観戦しているような気分になってきましたね。

パルス所有者としても、ゲーム参加者としてもまだまだ初心者の福原が、歯を食いしばりながらゲームにすがりつくというのが奇妙な感じなのですが、彼の中に生まれたパルスの持つ自我が、彼との共生をどのような形にしていくのか。また、作中の後半でようやく開花したらしい、彼のパルスの真の能力と、ゲーム運営陣の背後で起きている変化が、今後も大きく物語を動かしていきそう。

けれど、やっぱり、日常への回帰が描かれているのが良いですね。ぼろぼろになりながらも、福原が戦い抜けたのは、幼なじみの由紀との約束があったからだろうし、だからこそのラストの彼女の笑顔がホントに眩しく見えます。日常と非日常の微妙なバランスは、いつ崩れてもおかしくないのだけれど、帰る場所があるからこそ、最後にはなんとかいつもの日常を取り戻していくのかなあと思いました。

hReview by ゆーいち , 2008/02/21

ツァラトゥストラへの階段 2

ツァラトゥストラへの階段 2 (2) (電撃文庫 と 8-5)
土橋 真二郎
メディアワークス 2008-02-10