ベン・トー―サバの味噌煮290円

2013年4月18日

stars 狼は生きろ 豚は死ね! 半額弁当を巡る熱き戦い!

スーパーの半額弁当を手にしようとした佐藤洋は、何が起こったか分からないまま、吹き飛ばされていた。次の日、また次の日とその場で観察を続けると、見えてきたことがある。半額弁当をその手中にすべく、人間外れの闘いを繰り広げる人びとがいることを。「狼」と呼ばれる彼らの存在を。

半額弁当を買う。ただそれだけのことに激しい情熱と信念と燃やす狼たちを描いた物語。超人的なバトルをしているのに、その目的が数百円の弁当というのがなんとも変。目的はごくありふれているのに、そこで繰り広げられる真剣そのものの闘いがこの上なく熱いですね、なんだこれ。

氷結の魔女と呼ばれる槍水仙。最強の名を欲しいままにする魔道士。そして、名も知らぬ狼たちの闘いの熱に当てられ、一介の犬から一端の狼へ成長していく佐藤と、なぜか一緒に行動をともにしている白粉。みんながみんな、存在意義を賭けるかのような真剣勝負に身を投じ、そこから互いに認め合ったり反目したり。誇り高き狼たちの姿は、やってることは下らないのに、いちいち格好いいから困ってしまいますね。理由はどうあれ、真剣に生きて、真剣に戦って、そして真剣に食べる。

単なる弁当ではなく、この闘いの果てに手にしたそれだからこそ得られる満足感と、至上の味。自分の手で獲得したその弁当でしか味わえない、その一品は単なる売れ残りではなく、大きな価値のあるものなんだなあ。佐藤の闘いと成長を見ていくと、バカらしいようでいて、本気しかなかったように思います。

基本的にバカなんだけれど、弁当に関することに関してはどこまでも真剣に書かれていて、なんとも変な感じがしますね。他に例を見ない奇抜な題材ですが、だからこそこれまで見たこともなかったような面白熱い真剣勝負を堪能させて貰いました。未消化の伏線も結構あるので、これは続刊が期待できる?

hReview by ゆーいち , 2008/02/28