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荻浦嬢瑠璃は敗北しない

stars わたしは人間が、世界が、飛鳥井全死が好きだ

飛鳥井全死の奴隷である荻浦嬢瑠璃は数ヶ月の行方不明期間を経て学校へ復帰した。学校に通うこと、メタテキストを読むことができるようになれ、という全死の命令に従って。そして、現れる転校生。崩れ始める嬢瑠璃の日常。勝利者の王国の建設を目指す、嬢瑠璃の革命はここから始まる。

『飛鳥井全死は間違えない』の流れを汲んだ作品。元長節は健在で、今回もメタメタな展開を見せたかと思ったら、また愛に収束していったワケで。まぁ、登場人物のほとんどが女性だったりして、主人公もヒロインも女だらけというのは歪んでいるのかプラトニックなのか判断に悩むところですが、面白い作品でした。

メタテキストという概念。法に支配された現代社会と世界の関わり合い。人を支配する空気。そして、真なる意味での人間の姿とは。小難しい理論で、それっぽく武装させつつも、そこにあるのは、人間の可能性への愛おしさだったり、形の見えない何かに支配されてしまっている社会への絶望だったり否定だったり反駁だったり。

見えない戦争への前哨戦とも言うべき、嬢瑠璃の革命は痛快で、けれど、その革命を通じて得られたのは、結局は彼女と彼女の周囲の女の子で創り上げた勝利者の王国──小さな世界だったり。風呂敷を広げつつも、こういうごく身近な世界と愛への物語の収束というのは、なるほど元長作品らしいなあといった印象です。

所々に、『SenseOff』や『未来にキスを』とのリンクが描かれたり──くきゅの字はまんまだし──、他の作品を知っていると面白い考察ができるのかも。時系列的には『未来にキスを』、『SenseOff』、本作といった感じになるのだと思う蹴れぢお、それを踏まえると本作のラストで嬢瑠璃が得た確信とかも、すでに何度も描かれていたのかなあとか思えますね。そういう意味では本作を読んでいるけれど『未来にキスを』未プレーのひとは、そちらもおすすめしたいところ。まぁ、元長作品のファンはたいてい通過していると思うのですが。

そして、なぜに『ONE』ネタがこの作品に入れられているのか、すでに古典ではありますが、あちらもある意味『世界に革命』を起こした作品。元長氏的に外せない要素があったのでしょうか。意味深。

ともあれ、難解な文章に思えて、けれど物語自体はかなりすっきりと一本道なので、前作とあわせてお薦めしたい作品。元長作品に触れたことのない方は、まぁ、覚悟が要るかも知れませんが。

hReview by ゆーいち , 2008/04/12

荻浦嬢瑠璃は敗北しない
荻浦嬢瑠璃は敗北しない
元長 柾木
角川書店 2008-03

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