C3-シーキューブ〈3〉

stars 見てくれ……私が、してはいけないことをするところを

怪しげな女性が塀に上り、家の中を覗き込んでいた。アリスと名乗った優しげな女性は冗談交じりの言葉を発して去っていく。疑問を感じながらも帰宅した春亮とこのはは、居間で奇妙な光景に遭遇する。すなわち、四肢を拘束されくすぐられるフィアと、彼女を責めている、旅に出たままだった同居人・人形原黒絵の姿を。

黒絵の帰還に要らぬおまけまで付いてきてまたしても一騒動。今度のお相手は、礼儀正しく拉致監禁♪ な《ビブオーリオ家族会》のアリスさん。物腰穏やかな淑女然とした彼女ですが、やはりそこはそれ、水瀬作品の登場人物らしく見事にぶっ壊れていて、ちょうど1巻に登場したピーヴィーの対極に位置するような思想の持ち主でしたね。彼女の属する家族会も、素敵に狂っているし、作品の雰囲気自体はぱっと見、柔らかい感じはしているのに、一皮むけば壊れに壊れているのもいつものこと、だが、それがいい。

新キャラの黒絵も愉快なキャラだし、フィアの先輩として彼女の希望を担保してくれたり、ちょっとした誤解で傷つけてみたりと、似たもの同士で仲良くなれそうなふたり。そして、サヴェレンティとの意気投合ぶりは、妙に和みますね。

微妙な立ち位置のいんちょーさん、錐霞も春亮との関係に一歩踏み込んできた感じ。彼女のひとには見せられなかった姿を、忌避することなく素直に受け入れられる春亮の懐の深さも大したものだし、何より自分の所属を肩書きで規定していたようなきらいのある錐霞が、自ら望んで定めた居場所が、何よりも幸せそうに見えて嬉しくなってしまいますね。

もっとも、今回のお話で錐霞が下した決断が、研究室長国との確執を大きくしていきそうな予感も。先行き不安なお話ですが、続刊が期待できそうなのできちんとケリを付けてくれると嬉しいかも。次回以降も期待ですね。

にしても、フィアはどんどん可愛くなっていきますなあ。サービスシーンも眼福ものだし、ビバ!

hReview by ゆーいち , 2008/04/26

C3-シーキューブ 3

C3-シーキューブ 3 (3) (電撃文庫 み 7-9)
水瀬 葉月
アスキー・メディアワークス 2008-04-10