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死図眼のイタカ

stars 護るのも、救うのも、我々の仕事ではない。それは──君の仕事でしょう

地方都市・伊々田市を支配する朽葉嶺家。四つ子の姉妹の中からひとりの跡継ぎを選ぶ二十年に一度の儀式・継嗣会が間もなく行われようとしていた。当主の婿となるべく、幼い頃から朽葉嶺で育てられた少年・マヒルは連綿と続くこの儀式にわずかばかりの疑問を抱きつつも、その境遇を受け入れようとしていた。時を同じくして伊々田市近辺で頻発する少女の猟奇殺人、そしてマヒルは黒衣の少女イタカと出会い、朽葉嶺の家に隠されてきた血塗られた歴史を知る。

いやぁ、黒い黒い。けれど、この救われない展開がなんとも『火目の巫女』を思い起こさせて懐かしい思いを抱きます。そんなわけで、一迅社文庫から刊行された杉井光の『死図眼のイタカ』は、氏のデビュー作を彷彿とさせるような、陰鬱で救いがなく、そして容赦のない物語でした。でも、やっぱりこういう路線の話を書かせたら、上手い作家さんだなあという印象は変わらないで。逆に、『さよならピアノソナタ』とかでしか、杉井光を知らないひとが読んだとしたら、度肝を抜かれるかもしれない、そんな強烈な印象を抱かせる物語でした。

顔を見ただけでその人物の名を知ることができるマヒルと、人外の存在GOOsを狩る、その身にGOOsを宿した少女藤咲イタカの出会いから始まる、あるいは狂ってしまった物語。あるいは、出会わなければ、また別の結末が得られたかも知れない、と思ってみましたが、ないなあ。どう転んでも、マヒルと、彼と結ばれるべく育てられてきた四姉妹の運命は、決定的に断絶してしまう未来しか用意されていないように思えます。けれど、そんな過酷な業を背負わされつつ、生き残ったひとびとは、これからも生きていかなければならず、ならば、生きていさえすれば得られる幸福なんてものもあるんじゃないかなと、そんな別の救いを求めたくもなってしまいます。

どうしようもなく傷つけられ、何よりも自分を許すことができなくなってしまった彼女と、そんな彼女を大切にしようとするマヒルが選んだ道は、やはり彼らがこれまで身を寄せてた朽葉嶺の家と同じように、呪われた、血に塗れた道かもしれず。けれど、そんな未来を選んだマヒルだからこそ、この事件で得た何かを、幸せを掴むために使ってほしいなと願ってしまいます。

タイトルにもなっているイタカも、その役割が過酷すぎて、ヒロインという役割より、やはり彼女も犠牲者なんだなという印象ですね。彼女と藤咲の関係もなんとも危なげで、マヒルとの出会いで変わった気持ちが、どう作用するのか。彼女が見せた降らないはずの雪の白さは、これまで塗れてきた血の赤を覆い隠すほど、積もったのでしょうか……?

GOOsとかの用語の出現は唐突だったり、またマヒルやイタカの能力も、あるがままに描かれていたりとちょっと説明がほしい部分もあったりしましたが、こういう悲劇的な物語をそれこそ伸び伸びと書いてるように見えてしまう、杉井光は、やはりこの手の物語が書きたかったのかなとか思ってしまいます。一迅社文庫で今後も出すようなら、この路線を読んでみたいですね。

hReview by ゆーいち , 2008/05/23

死図眼のイタカ
死図眼のイタカ (一迅社文庫 す 1-1)
杉井 光
一迅社 2008-05-20

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