騎條エリと緋色の迷宮―英国亭幻想事件ファイル

2008年6月7日

stars お前が助けるべき相手は、足下にはいないんだよ。お前が守るべき相手は、いつだって目の前にいるんだ!

連続殺人犯の犯行の現場に居合わせ、巻き込まれることになってしまった瀬名皐月。そして、その事件に関わることにより、皐月は自らの身体に未知の病巣を抱えることとなる。彼の命を救うことができるかも知れないという人物・騎條エリは、喫茶店『英国亭』の2階に事務所を構え、何かを研究しているという。そして、彼女が現在研究対象としている『EVE』と呼ばれる存在と、殺人事件、そして皐月の身に起きた異常は関連があるらしく……。

宿主となった人物に超常の力を与える存在『EVE』を巡って、傲岸不遜だけれども美貌の少女・騎條エリと、過去の事件の傷から他人と親しくしない生き方をしてきた少年・瀬名皐月の出会いから始まる物語。

事件の黒幕というか、犯人捜しは読者的にはすぐに予想がつくのかも。というか、物語を盛り上げるための消去法で行くと、自然とそこへ辿り着いてしまうというか。そういった意味では、タイトルから受ける謎解き要素よりも、事件の根幹にある『EVE』によって起こされる、異能の物語といった印象が。

けれど、逆に主人公となるエリが、主人公らしからぬ無敵万能さを持っていないのは好感かも。頭脳一つで物語の背景にあるいとを解きほぐし、真相と相対し、自らも傷つきながら解決に至るというのは、相手の傷を抉りまくる単なる探偵役とはちょっと違うかなあといった印象。

物語的には犯人の正体とか、皐月の過去の傷の癒しとか、その辺は良くあったりする類の話ですが、そもそもエリの背景があんまり語られてないので、続刊あるとしたらその辺に切り込んでいくのかな?

hReview by ゆーいち , 2008/06/07

騎條エリと緋色の迷宮

騎條エリと緋色の迷宮―英国亭幻想事件ファイル (電撃文庫 あ 24-1)
秋月 大河
アスキー・メディアワークス 2008-04