スプライトシュピーゲル〈4〉 テンペスト

stars 世界が平和でありますように。私の本心からの願いだよ。

ミリオポリスで戦犯法廷が開かれる。大量虐殺を指示した被告であるアツィム将軍と、証言を行う七人の証人。彼らの警護を任じられた MSS。しかし、嵐の到来と共に襲撃を受ける証人たち。様々な思惑が絡む戦場と化す国連都市。そしてその法廷で真に裁かれるべき秘密が明かさるとき、世界の真実は残酷さをもって凰たちの前に姿を現す。

[tegaki]うおおおおおおお!?[/tegaki]

全編大盛り上がりの第4巻。冒頭の凰と冬真のエピソードで、ふたりの距離が縮まったかと思いきや、その後の本編「テンペスト」ではこれまででも大概にとんでもない事態だと思っていた過去の事件を、軽くぶっちぎってくる展開。二転三転する状況に翻弄され、守りたいもの、守るべきものを、ことごとく喪っていく MSS の面々の痛みがこれ以上ないくらいに伝わってきますね。辛いし痛いし切ない。

序盤に展開する TRPG「世界統一ゲーム」からして異様な盛り上がり方。というかテーブルトークをここまで緊張感たっぷりに描いて見せたかと思ったえら、それが前哨戦にすぎないって、どれだけ後半が盛り上がるかってなもんです。けれど、そのゲームの中で、凰や乙、雛が国のトップとして演じ、経験させられたあらゆるものが、その後の展開に遺憾なく活かされているってのもすごいなあと。あのゲームの前後で、小隊メンバーの価値観というか意識ががらりと変わっているような印象がありますね。

そして、もうひとりのリヒャルト・トラクルの出現から始まる未曾有の嵐。喪われていく命、非情な現実に打ちのめされていく MSS のメンバーたち、信じていたものが反転し、正義と信じていたものが悪であるかも知れないという残酷さ、そして、自身のこころの不確かさに怯える気持ち、何もかも放り込まれた坩堝のような状況下で、それでも戦い抜いていく彼らの姿に刮目せよ、と。

ああ、もう、この凄さをどう語ればいいのやら。オイレンとのリンクがこれまたすごいことになって、こりゃまたあっちの物語が楽しみになることこの上ないですね。特に最後の戦闘の内容と、エピローグのビデオレター、なんか、こういうすれ違っていた両チームが、一瞬でもひとつになるような瞬間が見られたというのは、なんだか切なくて涙が出そうになりますね。

天井知らずに物語のテンションが上がっていきますが、あと2巻で完結とか。一体どんな結末が用意されているのやら、楽しみで仕方がありません。

hReview by ゆーいち , 2008/07/03