とらドラ8!

2008年8月10日

stars 私は『あんた』を信じてるの。あんたは、みのりんが恋をするにふさわしい人間だって。それだけの理由がある人間だって。

クリスマスイブに受けた実乃梨からの拒絶、そしてだめ押しとばかりに罹ったインフルエンザで散々な冬休みを過ごした竜児は、傷心のまま新学期を迎えようとしていた。そして、大河から突然告げられる竜児からの自立宣言。まっすぐに実乃梨と向かい合えない竜児は、目前に迫った修学旅行を最後のチャンスととらえ、彼女の真意を確かめるため決意を固める。

竜児の、大河の想いが動き出したのは良いことだったのか悪いことだったのか。前巻のクリスマスの出来事が尾を引いたまま迎えた修学旅行は、波乱の予感。

舞台が修学旅行へ移る前の、ぎこちなくなってしまった人間関係が痛いですね。竜児は実乃梨とぎこちなくなるし、大河は竜児からの独立を一方的に宣言するけれど、らしくないくらいに罪悪感を抱いている。実乃梨は竜児に取った態度の後ろめたさを感じさせない様子で新学期を迎えるし、亜美に至っては竜児に対して露骨に悪意をぶつけてくる。ちょっとだけすれ違いが生まれただけなのに、ここまで歯車が噛み合わなくなってしまうというのは、本当に切ないですね。それが、雪山でのさらなる混乱の種になってるわけですが。

衝突する実乃梨と亜美。亜美が突っかかって行っている理由は、明確にされないままだけれど、竜児が実乃梨に対して感じた苛立ちだったりと似たような気持ちで、竜児にはできないことを、言えないことをぶつけているように感じますね。実乃梨が頑なに自分の世界を堅持したがる本当の理由が未だに分からないけれど、それを竜児が知って、本当の彼女の姿を見たときにこそ、竜児自身の気持ちがようやく固まるんじゃないかと、そんな気がします。

そして、大河の気持ちの行方ももうひとつの問題。北村を想っているはずなのに、距離が縮まったことが喜ばしいはずなのに、大河の心の中の大きな部分を占めている竜児。結局、大河は竜児への依存を止めることができなそうだし、それは竜児の大河への世話焼きがあるからだけでなく、知らぬ間に心まで救われていたという、そんなことに気付いたからなのか。

こんがらがった恋心と友情と、気付いているはずなのに認められない自分の気持ち。もう、コメな要素が消し飛んでしまって、終盤は胃がきりきりするような愁嘆場の様相を呈してきていますが、この出口の見えない物語にせめて暖かな光が差してほしいと、そんな風に思います。

hReview by ゆーいち , 2008/08/09