断章のグリム〈8〉 なでしこ・上

2008年9月3日

stars もう答えなんか出ねえよ。あいつはもう死んじまったんだ。

人魚姫の〈泡禍〉事件から2ヶ月。蒼衣は神狩屋とともに海部野千恵の見舞いに向かう。見舞いに興味のない雪乃を残して訪れた町で起こる、新たな惨劇。金森琴里の自殺から始まったその事件が〈泡禍〉によるものと判断した神狩屋と蒼衣は雪乃と合流し、この町の〈ロッジ〉の一員である木之崎一真の依頼のもと、彼の友人・石田臣を救うために動き出す。

童話「なでしこ」を見立てにした事件に巻き込まれていく蒼衣たち。今回も姿の見えない泡禍の恐怖と、容赦のないグロい死の描写が冴え渡っています。が、上巻なので、事件の導入部分に過ぎないわけで、これからさらにエスカレートしていくのですかね。題材がマイナーではあるけれど、その話の中で描かれる死の多さとか、その悲惨さとかは結構なものがあるので、それが現実にフィードバックされるとなると、まだまだこれからが本番というのは疑いがないわけで。

ゲストキャラ的に登場した一真や臣は、この事態に対応することもできず、恐怖と身内を失った怒りに支配されかけているような。どうも、流れ的に臣が怪しい感じがするんだけれど、このままだと、また誰も生き残れないような気がするなあ。

それと、わざわざ海部野千恵を登場させた意味がまだ分からないですね。人魚姫の事件で十分に傷つけられたのに、まだ追い打ちをしようというのか、あるいは、今回の事件解決の鍵となるのか。火を鎮めるために、泡を用いるとかありそうだけど、彼女の力は自分の命さえ危うくさせる危険なものだから、退場と引き替えにとか、また悲惨な結末が用意されていそうで怖いですね。

hReview by ゆーいち , 2008/08/10

断章のグリム 8

断章のグリム 8 (8) (電撃文庫 こ 6-21)
甲田 学人
アスキー・メディアワークス 2008-08-10