俺の妹がこんなに可愛いわけがない

2008年12月10日

stars おいおい……だから誰なんだこいつは。こんなかわいい妹に、心当たりはねえぞ?

俺・高坂京介の妹・桐乃は、普通を信条とする俺とは似てもにつかないあか抜けた中学生。いわゆるイマドキのそんな桐乃は、俺を平気で見下す高慢ちきな妹。毛嫌いされる相手を好いてやる道理もなく、俺も桐乃とは最低限の会話しかしていなかったのだが……。桐乃がひた隠しにしていた「秘密」を知ってしまった俺は、「人生相談」の相手までさせられることになって……。

乃木坂春香さんもおすすめの本書。どんな本だって、彼女がおすすめしてるんだから、ねえ、分かるでしょ、的なお話です。そっち知らなくても、とりあえずこの本は読んじゃえ、面白いから。

オタク趣味をひた隠しにしていた京介の妹・桐乃。京介自身はオタクの世界とは隔絶した普通の生活を送っていて、高坂家はそんな趣味を許容する空気は皆無。ひょんなことから、桐乃の趣味を知ってしまった京介が、彼女のオタク趣味を肯定するために、人生相談名目であれやこれやの手助けをする、そんな物語。

面白いは、桐乃が女子中学生という、オタク文化から遠く離れた生態を持つ存在だということかな。だからこそ、その趣味を誰とも分かち合えず、ひとりだけの世界に留まっていて。それは、その趣味を知った京介も同様で、桐乃からの洗脳工作も受け付けず、むしろ拒絶反応見せたり。なのに、そんな桐乃の友達探しをするために骨を折ってやったりと、何気にいい兄を演じてますね。

妙に生々しいオフ会の展開――ここで知り合うふたりの友人も、桐乃に負けず劣らずな強烈な個性を持ってますが──を経て、順風満帆に見えた彼女のオタクライフは、最後の最後で最大の危機を迎えて。ここで見せる京介の兄貴的活躍は、これまでの虐げられてきた彼の姿とは一変したかのような格好良さ。妹の趣味がどうこう、ではなく、彼女がようやく手に入れた、彼女の世界を守るために、彼女が彼女らしくあるために、身を張るなんてのはそれこそ肉親相手でもなかなかできないでしょ。心の中で毒づきつつも、桐乃のために何かしてやれることが嬉しかったのかどうか、そんなことは分かりませんけど、これは日本のお兄ちゃん像ですな!

そして、エピローグ。もう、ここで、こういう締めはお約束ながらも挿絵の威力と相まって反則級ですね。そりゃ、京介もお手上げでしょう。これからも続く人生相談、なんだか目的が変わる雰囲気も感じられますが、ちょっとだけ近づいた兄妹の距離にによによできること間違いなしです。

あ、あと幼馴染みのあの子は大変素晴らしい幼馴染みの鑑です。こんな妹と、こんな幼馴染みがいるだけで、あんた勝ち組だよ、絶対。

hReview by ゆーいち , 2008/08/10

俺の妹がこんなに可愛いわけがない

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫 (1639))
伏見 つかさ
アスキー・メディアワークス 2008-08-10