“文学少女” と神に臨む作家〈下〉

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stars ねぇ、泣かないで、胸を張って、笑って、見つめて、考えて、立ち上がって、一人で歩いて。

「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」 流人の言葉に恐れを抱きつつも、自らを救ってくれたななせを守ろうと誓う心葉。しかし、心葉の内にひっかかる、遠子先輩への思い。流人が懸命に救おうとする彼女の、これまで知らなかった過去を知り、真実を知り、そして心葉は天野遠子という少女の物語の核心へ至る。

シリーズ集大成にして大団円!

エピローグを読み終え、しばらく時間をおいてから、ようやくいろいろ考えることができるようになりましたが、これまでに心葉と遠子先輩がともに過ごしてきた時間があったからこそ、至ることができた結末、そして微妙にへたれていた、優柔不断ぽかった心葉が選んだ道の先にある未来、そういったことが語られた最終巻に、大きな感動を覚えています。

前巻の引きで凶悪化した流人の行動は、過激化するかと思いきや、そのお株を奪う最凶のヤンデレキャラ・竹田さんの復活により、一気にパワーダウン。というか、彼が変に奔走したせいで物語がこじれた面もあるけれど、まさに身を張って遠子先輩の問題の解決に貢献してくれたわけで、結果オーライ……なのかなあ。まぁ、エピローグでの彼も、それなりに幸せを得られているように描かれているのは、本当に良かったと思いますが。

心葉をひたすらに想い続けてきた琴吹さんが、こういう扱いになってしまったというのは結構辛いものがありますね。心葉のへたれさのせいで美羽に続いて傷つけられてしまったというか、けれど、今回は心葉も自覚的に彼女を傷つけ、そして琴吹さんもそれを受け入れる強さを見せたりと、終わってしまってからも描かれる、彼女の魅力というのは決して褪せるものではないと思いましたね。

そして、これまで心葉を導いてきた遠子先輩の、彼女自身の物語。これまで、彼女が“文学少女”として語ってきた、シリーズのすべてのエピソードがあったからこそ、心葉は遠子先輩の物語を読み解き、ひとつの答えを想像し、提示することができたのだと思います。ここで彼が語る物語は、井上ミウとして描いてきた優しさと、心葉として得た強さを支えにして、遠子先輩たちに救いをもたらすことができたんでしょうか。止まっていた関係が、ようやく雪解けを迎えた様を見れば、心葉の頑張りは無駄でなかったと思えますね。
そして至るエピローグ。遠子先輩の卒業と心葉の歩みだし。これまでともに同じ道を同じ歩調で歩いてきたふたりが、明確に道を別ち、その先に向かえる未来。あぁ、もう、こんなラストシーン見せられたら何も言うことなくなりますよ。『月花を孕く水妖』で語られた未来のシーンを上手いこと裏切ってくれたというか、こういう結末が見たかったというそのものずばりを描いてくれたというか、とにかく最後の2ページは胸が詰まる思いでしたね。すべての過去の上に成り立つ未来を得た心葉たちに祝福を。

とにもかくにも、全編通して素晴らしい物語でした。完結記念に、最初から読み直してみるのも良いかもしれません。今後の短編集などにも激しく期待しています。

hReview by ゆーいち , 2008/08/31

“文学少女” と神に臨む作家 下

“文学少女” と神に臨む作家 下 (ファミ通文庫 の 2-6-8)
竹岡 美穂
エンターブレイン 2008-08-30
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