嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん6 嘘の価値は真実

2008年9月26日

stars みーくんは、わたしが死んじゃったら泣く?

のどかな学校生活に帰還した僕とまーちゃん。とある日の体育の授業をふたりで絶賛サボタージュ中に、体育館に闖入してきたのは人間を辞めたっぽい人物 with 猟銃。問答無用でぶっ放し、血の池をせっせと作るそいつの魔手から逃れた僕とまーちゃんの、クラスメイトを救出するための正義の戦いが、今、始まる。嘘だけど。

毎度毎度極限状態に陥りながら生きながらえるみーくんが、今回は珍しく主人公らしい活躍? てか、みーくんが言うとおりの今回の犯人は、完全に小物扱いされて、反撃され始めると精神的に圧倒されていっているせいか、生死ぎりぎりのやりとりをしているわりには緊迫感が薄かったかも。

種が明かされてみると、なるほど、犯人自身も上手いこと踊らされていたというか、背後にはやっぱりどこか切れてしまった人物がいたりして、そういった物語構造はシリーズ通りという感じではありましたが。

むしろ、挿話である、他のキャラの物語の意図の方が気になったかもしれません。これまでみーまーに関わったひとたちの、現在の日常が描かれたり。誘拐された兄妹は長瀬妹との親交を深めていたり、仕事を辞めた恋日さんは自堕落に生きていたり、奈月さんと湯女さんの虚実入り交じった腹を探り合う会話とか、海老原香奈恵の日常とか。非日常に身を置いて、危機真っ直中のみーまーとは別の、毎日を送っている彼らの姿というのがなんとも奇妙というか。いや、逆に、いつでもどこでも大変な目に遭ってるみーまーこそがおかしいんですけどね。

さて、なんだか物語はあとがきを見る限り、ここでいったん終わりそうなんですが、ラストの解釈が難しいですね。以前のにもうとの話でもそうでしたが、生死不明でぼかされているのがなんとも嫌らしい。真犯人の述懐が軽い口調で書かれているだけに、そのラストの一言がむやみに衝撃的になるのですが。

でも、考えてみると、「誰」が犠牲になったのか書かれていないのは上手いですね。確かに物語の流れ的に、みーまーのいずれかがどうにかなったと読めるのですが、海老原香奈恵の挿話の最後の解釈の仕方によっては、選択肢、可能性がもう一つ生まれるんですよね。そうすると、いったい真犯人が耳にした犠牲者が誰だったのか、それは本当に分からなくなります。誰も救われないかもしれないし、もしかしたら誰かが救われたかもしれない。シュレディンガーの猫よろしく、それからが語られることがなければ、あるいはみんな生き続けているのかもしれませんね、私たちの心の中に。嘘っぽいけど、本当になってほしい、かな。

hReview by ゆーいち , 2008/09/09

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 6

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 6 (6) (電撃文庫 い 9-6)
入間 人間
アスキー・メディアワークス 2008-09-10