藤堂家はカミガカリ〈3〉

2008年9月26日

stars 帰ってくるから、絶対。大切だから、この家が。矢が降ってきても帰ってくるから。

藤堂家で毎日を過ごす神一郎と美琴の前に現れた、新たなハテビトはギリシャ勢力のアルテ。アルテの攻撃に苦戦するふたりを助けたのは、かつて敵同士でもあったレッテで……。一方、春菜は親友の沙紀の言葉に心が揺れていって。

相変わらずのノリは健在で何より。

藤堂家での神一郎たちの軽い掛け合いが楽しいですね。日常はやたらとテンション高く進んでいって、さらに敵が出てきても緊迫感を余り感じないのに命のやりとりだけはしっかりとやっているギャップ。この妙な感覚は、この作品ならではですね。

突然の親友・沙紀の恋バナに戸惑う春菜。それもそのはず、沙紀の気になるお相手は神一郎で。自分の気持ちをはっきりと口にできない弱さが災いして、悶々と時間を重ねながらも、神一郎の鈍感さと、沙紀の勘違いで大事にならずに片が付きましたが。けれど、今回のエピソードのおかげで、春菜も少しだけ自分から神一郎へ近づこうという勇気が湧いたみたいだし、神一郎の方も春菜に対して家族以上の気持ちを、ほんの欠片でも感じ始めたかな?

もっとも、神一郎が藤堂家に留まり、春菜を見守る理由は、負い目に寄るところが大きいから、これからさらに距離を縮めようと思ったら、過去の事実を明かし、許される必要があります。そのハードルは高いけれど、意外にこの作品のノリだとさらっと受け入れてくれそうな気もしますね。

奇妙な縁で共闘することになった北欧勢力のレッテとミリカも良い味出してるし、毎回ちょい役でちょっかい出してくる吸血鬼勢力も今回は見せ場があったり。今巻の表紙も謎なキャラですが、読んでみれば意味が分かります。

そんな感じでまったり進む独特の雰囲気のシリーズ、今回も楽しませてもらいました。なんだか、いったんここで話が終わりそうな雰囲気をあとがきから感じましたが、続いてほしいですね。

hReview by ゆーいち , 2008/09/19

藤堂家はカミガカリ 3

藤堂家はカミガカリ 3 (3) (電撃文庫 た 21-3)
高遠 豹介
アスキー・メディアワークス 2008-09-10