アンダカの怪造学〈9〉 Hyper SamuraiSoul

stars 天網恢々疎にして漏らさず――正義の味方、ただいま推参!

人類側の最終兵器となった伊依。そして、その最終兵器に対抗する手段を講じつつある魔軍。膠着状態に陥った戦局を覆すには、伊依の力だけではもはや足りなくなっていた。そんな状況で進行を開始する虚無大公の軍勢。かつては魔王に匹敵するとも言われた虚界の四大公の中でも別格の存在。彼に対抗できる力は、最終兵器ではなく決戦兵器。そして、決戦兵器完成の鍵は禁忌たる物造と、その申し子たる舞弓が握っている。

虚無大公との戦いを通じて、虚界誕生にまつわる謎だとか、舞弓の特殊性に秘められた過去、今までいろいろとほのめかされていた伏線が一気に回収された感のある第9巻。

いよいよ魔王との決戦も間近に迫り、ようやく舞弓、再起のとき。これまでさんざん伊依に水を空けられた感のある舞弓ですが、やはり正義の味方を自称する彼女はひと味違う。伊依の信じ抜く強さとはまた違った、貫き通す強さをここにきて見せてくれましたね。舞弓自身の出自に関わる秘密は、これまでの登場人物たちの背負ったものに比しても、重いやら苦しいやらあるのに、それを気合い一閃振り切って伊依の力になるために馳せ参じる、これまで馬鹿っぽいと思えていた彼女の正義感が、ことここに来て誰よりも頼りがいのある姿に見えるのは、間違いじゃないでしょうねー。

そして、そんな業を背負わせ、自らもそれ以上の咎を背負ったつもりの虚無大公こと影文くんの物語もひとまず完結。過去に生まれた憎しみを回り回ったあげく果たすことはできなかったけれど、それはまた別の形で伊依や舞弓がケリを付けてくれる問題。今の彼に与えられた世界は狭いけれど、それは、かつて彼が得ていた世界に勝るとも劣らない、かけがえのないものになっていくんじゃないのかな。真子ちゃんもようやく報われた、良いエピローグでした。

さてさて、そんな感じで、魔王サイドは最後の攻勢をかけるべく謎のキーワード・侵略兵器&MC計画とやらが着々と進行している模様。人類側にふたつの切り札が揃って、もはや死角なしという感じになってるのですが、それすらあっさりひっくり返されそうなのが日日日作品たるもの。もう一波乱、二波乱? ありそうですね。

hReview by ゆーいち , 2008/10/07

アンダカの怪造学IX Hyper SamuraiSoul

アンダカの怪造学IX Hyper SamuraiSoul (角川スニーカー文庫 185-9)
日日日
角川グループパブリッシング 2008-08-01