ライタークロイス〈4〉

stars 卿は、いつも、いるのだな。試験のときも、ウガルの山でも、魔物と対峙したときでも、私のそばにいてくれるのだな。

インフェリアでの魔物の襲撃を辛くも退けたカインは、帝国の皇子・ハイラムに謁見する。妹のファリアを案じるハイラムの言葉を賜りながらも、カインと当のファリアの毎日が大きく変わることもなく。しかし、帝国は内外から様々な危険に晒されている。東から攻め寄る魔物、そして、ハイラムの施政に不満と危機感を抱く層からの反発。カインの与り知らぬところで陰謀が蠢く中、突然レイクがファリアの従衛をやめると言い出して……。

いやいやいや、面白いですね、このシリーズ。何となくイラストが地味な感じで一見さんが手に取らないタイプの作品ですが、回を重ねる毎に物語が面白くなってきてます。

騎士を夢見て帝都を訪れたカインが、ひょんなことから騎士登用試験に関わる陰謀に巻き込まれ、それを契機に、国全体を揺さぶるような大きな事件が連鎖的に起きてきていて、かなりスケールの大きな話になってきてますね。

カインが騎士になれるかどうか、というカイン自身の物語と、この世界の謎めいた仕組みなどが少しずつ明かされてくる大きな枠組みの物語が上手いこと絡み合って進行していて、非常に引き込まれます。

今回はついに帝国内部の亀裂が露呈した感じで、そして、ファリア自身の重大な秘密が明らかになって衝撃も二倍。ファリアの兄・ハイラムは言動だったりがどうにも悪役っぽく感じられるんだけれど、大局的に見ると非常に有能な為政者で、妹を思いやる気持ちを大切にしつつも、国のためにあらゆることを捨てる覚悟も完了してるっぽいキャラ。何となくシュナイゼルが思い起こされるんですが、ラスボスになったりしないですよねえ……?

そして、隣国インフェリアとの微妙な均衡の上に成り立つ表向きの平穏と、その裏で張り巡らされる策謀がまた面白い。どちらの国も一枚岩でないだけに、ときには敵対しつつある国という枠を超えて協力し合ったりと、そういった勢力図が刻一刻と移り変わる様も緊張感がありますね。魔物の脅威にさらされる世界の中で、国同士が一触即発という状況はかなり危機的なのですが、これからさらに大きな危機が訪れたとき、どういう展開に発展するのかというのはかなり気になりますね。

そんな大きな波に飲まれそうになりつつも、カインは着実に力を付けてきてる感じ。今回のレイクとの一件はかなりはらはらさせられましたが、この終わり方は一件落着かな。こういう友情ものも良いものです。そして、カインの知らぬ間に女の戦いに発展しつつあるファリアとイングリドの氷点下の鍔迫り合いは、一体どんな決着を見せるのか。ホント、見ててハラハラさせられますね、人ごとのはずなのに。

hReview by ゆーいち , 2008/10/08