機械じかけの竜と偽りの王子

2009年7月8日

stars 僕は……。……僕はアルトゥール。フランシスカの兄です。

リュクサリアへ侵攻するオルガンドの襲撃を受けつつも、奴隷のイアンはその場を辛くも逃れることができた。しかし、逃げる最中、偶然にも搭乗し動かすことに成功した機巧鎧アームネイン・エリュシオンは、リュクサリア王家の正当な血を引き、機士として卓越した能力を持つ者のみが操れるものだった。エリュシオンによって助けることができた王女フランシスカは、イアンを腹違いの兄と信じ込む。そして、イアンは首都を追われたリュクサリア反撃の切り札として、様々な思惑の渦中へと巻き込まれていく。

[tegaki]こいつ、動くぞ![/tegaki]

偶然動かすことのできた機体は、王家の血を引く者のみが操れる特別製。そのおかげで、戦争に巻き込まれ、さらには身に覚えのない兄の役目まで押しつけられたイアンの波乱の物語が幕を開ける。

中世的な世界がらも、そこに機巧鎧と呼ばれるロボット的な要素を盛り込んで、なかなかに重厚な展開を予感させる第1巻です。機巧鎧のデザインを FSS の MH っぽいなあとか思ったり。まぁ、大昔に作られたはずの機体が、現行機を圧倒してみせたり、なんだか不思議パワーで窮地を脱したりってのは、ある意味お約束ではありますが。

主人公のイアンは、奴隷として扱われていたせいか、貴族や王家といったこれまでに全く縁のなかった世界に組み込まれようとしても、なんだかビクビクオドオド。政治的な道具扱いされてますが、彼を利用しようと思いついたヴィクトも善意からって訳でもなさそうだし、これからさらに微妙な立場になっていきそう?

そもそも、王国を守るべきトップの人間たちの多くが、自らの功を焦ってたりして、これから反撃しなければならないのに、姫を巡って争ってる辺りが生っぽいというか、そんなんで良いのか、いい年したオッサンどもが。

物語的には、後の世に大きな戦争として語られる戦史のまだ序章の段階。そもそも、双竜戦争というからには、もう一方の竜が出てこないと話にならないのですが、それは誰なんでしょうね。いろいろと曰くのありそうなキャラもいましたが。さらにはエリュシオンが発揮した謎パワーとか不思議要素も詰め込まれて、まだまだ裏設定がありそうです。

hReview by ゆーいち , 2008/11/15

機械じかけの竜と偽りの王子

機械じかけの竜と偽りの王子 (電撃文庫 あ 27-1)
安彦 薫
アスキー・メディアワークス 2008-11-10