ダブルブリッド〈7〉

stars 山の神に敬意を。そして、俺の敵の目覚めに歓喜を。

元捜査六課のアヤカシ・八牧は、仲間を傷つけ害そうとする存在を排除するために行動することを決めた。あらゆる手段を用い、自身が死ぬことすら想定し。一方、童子斬りをその身に宿し、次第に浸食されていく太一朗は、己の意識が失われる前に童子斬りを手放すために、限りなく小さな希望を探すため、ひとり東京の街を彷徨う。全てのアヤカシの敵となった人間外の人間・兇人と化しつつある太一朗。彼が、童子斬りが、次に狙うのは……。

何もかもが壊れ、失われていく第7巻。

もはや手遅れと分かりつつも、どこかに救いを探そうとして、けれどこの展開のどこにもそんな光明など見えなくて。

優樹と太一朗、ともに残された時間の少なさが、ふたりの身体の異変となって顕在化してきているようです。優樹は肉体の不調として、太一朗は自身の意識の変容として。お互いに少なからず大切に思っていたはずの、相手の名前も姿も思い出せなくなっていく、その過程の救われなさ加減に切なくなってしまいます。

そして、優樹の拠り所としていた第六課も、失われつつあるような。八牧の、自らの命を賭けた最後の戦いも、彼の作戦の部品として拾ってこられたはずの少女・未知とのやり取りも、彼の大切な仲間たちと過ごした、最後の食事のシーンも、それがこれから失われると分かっていて、それでもその時間だけは平穏であると、そんな風に描かれているだけに、物語の締めの数ページの痛みがどうしようもなく大きくなってしまいますね。

ああ、もう、痛い痛い。すれ違い続け、望んでいないのに敵対するしか道が残されていないふたり。こんな調子で話が進んでいくと、誰も彼も死んでしまって、どん底のバッドエンドが待っているのではないかと思ってしまいます。

hReview by ゆーいち , 2008/11/25

ダブルブリッド〈7〉

ダブルブリッド〈7〉 (電撃文庫)
中村 恵里加
メディアワークス 2002-01