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うしおととら〈1〉我は冥界に斬り結ぶ/妖美術 アート・オブ・ザ・ダークネス

stars 夢を見たかった……おまえがあたりまえの娘として、笑ったり、泣いたり、怒ったりして……私を困らせる夢だ……。

‘90年代に刊行された『うしおととら』ノベライズがガガガ文庫Rとして復刻。いやぁ、原作コミックはもとより、オリジナルであるスーパークエスト文庫版も未だ本棚に入ってるんですが、懐かしさの余り購入しました。初読から15年経ってますが、原作好きにはたまらないノベライズであるという感想は今も変わりませんねー。

我は冥界に斬り結ぶ

妖刀“いなさ”とそれを生み出し、そして滅ぼすために追い続ける八十神家の兄姉の運命、そして、妖刀にとりついた妖と獣の槍の因縁から生まれる出会いと別れの物語。

本編のエピソード間に挿入される物語で、コミック版よりもホラー色強め。今読んでも妖刀に操られる人間の恐怖だったり、死の間際の描写だったりは恐いですねえ。脳内で藤田絵シーンが再生されるって、どんだけ私好きなんだ。

キャラ作りはばっちり、いまいちなノベライズにある性格が違うとか口調が違うとかそんなことがないのが安心。掛け合いとかとんちきなシーンはさすがに漫画に一歩譲らざるを得ないけれど、こちらから逆に本編に取り込まれた設定があったりするなど、作品としての完成度は高いですね。

お話的には結構悲劇的な結末で、原作の『霧がくる』とかに印象が似てるかも。あとは役目に生きることを運命づけられた人間の悩みだったり、逆にそんな運命を背負わされてもまっすぐに生き続けるうしおへの憧れとかは『外堂の印』に通じるものがあったり。

まぁ、そんな感じで良いノベライズです。

妖美術 アート・オブ・ザ・ダークネス

うしおの元に鎌鼬のかがりが訪れた。恐ろしい人間の襲撃を受け、兄・雷信を残し難を逃れたかがりは、うしおを頼ってきたのだ。襲撃者・三廻部秌みくるべ・しゅうは、うしおの持つ獣の槍を狙い、襲いかかってくる。秌が操る妖珠・殺羽に苦戦するうしお。「闇摺縁柵やみすりえんのしがらみ」に捕らえられ、このままでは絵と成り果ててしまう雷信を救うことができるのか?

雷信とかがり登場のお話。本編内時間では北海道への旅から戻った後あたりになるのかな。光覇明宗の法力僧で、道を外れてしまった三廻部秌の目的は、獣の槍を操るうしおと、強大な雷獣であるとらを、一枚の絵として封印することで。

主人公たちの見せ場は当然のこととして、今回は親父である紫暮が良い場所持って行ってますね。ボケボケなダメ親父な平時とは違って、こと妖絡みの事件では頼もしい親父であります。そして、こんなところでもさらりと裏設定が散りばめられていたり。

雷信とかがりはあんまり見せ場がないというか、もはや囚われのヒロイン状態な雷信は最後の共闘まで影薄い薄い。逆にかがりの方はとらへ抱き始めるようになった感情だったり、人間の献身的な行動への理解を通じて、うしお以外への人間への理解が生まれていったりと、終盤の鎌鼬兄妹の活躍への伏線になっていますね。

そして、妖と人間の間に結ばれる関係としては歪ながらも、それは純愛といっても良かったかもしれない秌と女郎蜘蛛・魅繰の結末はやるせないなあ。明確に敵対し、悪意を向けてきながらも、このラストはちょっと悲しい。『暁に雪消え果てず』的な結末を選ぶ余地がどこかにあったはずなのに、あるいは、秌がもっと早くうしおたちに出会っていたなら、そんな未来もあったかもしれない、そう思えたりします。

そして、来月には残り2話を収録した第2巻も出るということなので、楽しみ楽しみ。リアルタイムで漫画を読んでなくて、最近読んだ人――いるのかなあ?――にもおすすめな1冊です。う~ん、しかし、この文章書いた人が、まほろまてぃっくの原作をしているとは、知った当時は意外すぎてとても驚いたものです。

hReview by ゆーいち , 2008/12/20

うしおととら〈1〉我は冥界に斬り結ぶ/妖美術
うしおととら (ガガガ文庫R)
中山 文十郎
小学館 2008-12-19
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