パララバ―Parallel lovers

stars この日々はいつまで続くんだろう。そんなことを考えていた。

夏休みの終わりに友人以上に思い始めていた他校の男子・村瀬一哉が事故で亡くなってしまった。お互いにそれとなく意識し始め、これから新しい関係になるかも知れないという淡い期待を抱いた矢先の別離。彼女・遠野綾と一哉の物語はそんな結末を迎えるはずだった。しかし、一哉の通夜から帰宅した綾の携帯電話にかかってきたのは一哉からの電話。電話の向こうの一哉は、綾に問う。死んだのは綾の方ではないのかと。

携帯電話だけで繋がれたふたり。見つめ合うことも、触れ合うこともできない果てしなく遠い世界に別たれてしまったふたり。決して結ばれない、恋人未満な綾と一哉が、たったひとつの繋がりを頼りに、真実を探していくお話。

あー、このラストは切ないですね。互いが互いのいない世界に生きているという、その事実を除けば、どこまでも続いていく日常で、そこには奇跡なんてないから、帰着するラストとしては至極当然の決別でしたね。

個人的には、そこに至るまでの、綾の葛藤とかをじっくりと描いてくれても良かったかなあなんて気もしますが、このあっさり過ぎるように感じる、彼女の一言までの背景は、それこそいくらでも想像できてしまいますね。だからこそ、そこに思いを広げると、実らなかった恋の痛みがじんわりと滲んできたりするんですよね。

犯人捜しの要素とか、割とヒント多めだからすぐに誰が怪しいかなんてのは分かっちゃうんですが、お互いの世界でお互いが証拠を探しつつ、真相に至るなんて構成は、ちょっと前のザッピングシステムを彷彿とさせたり。

届かない距離にいるからこそ、携帯電話という声を繋ぐだけの道具に託した想いというのもきっとあったんだろうなあ。はっきりと言葉にしなくても、ふたりの会話の中に散りばめられていた、お互いを気遣ったり、いとおしんだりする、その色は、きっと伝わっていたのだろうと思います。

hReview by ゆーいち , 2009/02/21

パララバ―Parallel lovers

パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)
静月 遠火
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