静野さんとこの蒼緋(ふたご)

2009年2月28日

stars お待たせしたかな? 今更、紹介するまでもないと思うけれども、やっぱり最初の挨拶は大事だからね、きちんと紹介するよ。

「紹介したい人がいる」という父の言葉で蒼介が引き合わされた少女・緋美子は、今の今まで知りもしなかった自分の双子の妹だった! 父とふたり暮らしの家に、押しかける形で同居することになったあげく、学校も一緒。蒼介にきつく当たる緋美子には何やら秘密があるようで……。そして、学校で頻発する不可思議な事件に巻き込まれていく蒼介に、心休まる日は再び訪れるのか?

昨年出た『君のための物語』からずいぶんと作風が変わったような印象の本作。あちらは、落ち着いた雰囲気で上品な感じがしていましたが、こちらは学園ものということも相まってか、ドタバタありつつさくさく読める作品でしたね。

兄妹ものの例に漏れず(?)な兄に対してとにかくきつく当たる妹の緋美子と、そんな妹に頭の上がらない兄の蒼介。父親に再会させられるまで、その存在すら知らなかった蒼介は、妹の登場によって生活が激変。家でも学校でも、彼女が世界の中心になったかのような環境の変化に、いろいろと思うことがあって対立したままで。

と、そんな展開だと、兄と妹の和解がお話のテーマの一つであることに疑いの余地はなくて、実際そういうシーンもあったりするんだけど、どちらかというと兄妹の関係と同時に存在する両親との関係の方に重きが置かれていたような気もしますね。母親との件とかはなかなか……。別れ別れになった静野一家の、それでも消えない絆の一端が垣間見えた気がします。

ツンツンした緋美子の序盤の言動はそれはそれはきついのですが、さすがにだんだんと兄を認めていっている変化は確かにありますね。緋美子の秘密が明かされ、それでわだかまりが消えたおかげか、終盤ではずいぶんと息のあったコンビネーションなんて見せてくれてますね。この兄妹の関係が、これからブラコン・シスコンな方向へ行くのか、あるいはお互いをお互いで応援し合うような方向へ行くのかというのも気になるところですねー。

静野さんちの隠された秘密とか、なんか取って付けたような感じがしたのがちょっと残念。というか、蒼介の部活の定子先輩とか、思わせぶりな描写があったのに関わりが少なかったような……。なんとなく、いろいろ語りたいところはあるのに、都合によって削られてしまった、みたいな部分があるように思いました。続きがあるとしたら、そういった部分にも焦点が当てられるんでしょうかね。

hReview by ゆーいち , 2009/02/27

静野さんとこの蒼緋(ふたご)

静野さんとこの蒼緋(ふたご) (電撃文庫)
水鏡 希人
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