ソフィア、詠と絆と涙を抱いて―黄昏色の詠使い〈9〉

2019年7月22日

stars ……わたし信じちゃうよ? 本気にしちゃっても……いいの?

凱旋都市エンジュ、夜の競闘宮で繰り広げられるミクヴァ鱗片を巡る戦いは続いていた。シャオが目指す理想など関係なく、ただクルーエルを失いたくない、その想いだけを頼りにするネイトの前に、最大の選択が迫られる。クルーエルを想うネイト、ネイトを想うクルーエル、ふたりがふたりのために下す決断の時が迫る。

第2部完結編! ということで、ほとんどの謎が語られることになりましたね。

前巻でネタ晴らしのあらかたが完了していたおかげか、今回はそれを前提に、登場人物たちがどんな道を選ぶのか、その選択を迫られる展開になってますね。主人公たるネイトやクルーエルは当然として、これまでなかなかその真価を発揮してこなかったカインツの虹色名詠の本領がようやく発揮されましたね。

見せ場的には、そんなカインツとファウマのバトルが一番盛り上がりを感じましたね。戦いの合間に、それぞれの状況が挿話的に語られるので、じりじりと焦らされてるような感じがしてしまいましたが。カインツが大切にする虹色の名詠と、そんな彼に一縷の望みをかけていたファウマの、あるいは望まなかった対峙という、なんとも燃えるシチュエーションと、救いをもたらす優しい決着に、甘いと思いつつも拍手喝采でございます。

メインキャラの中では、挫折しっぱなしのエイダはアルヴィルの残酷な言葉を突きつけられて、果たしてこのまま心折れたままなのか? 同じように敗北を喫したレフィスと同様、雪辱の機会が訪れるような気がしますね。おあつらえ向きにラストダンジョンも登場したことですし。

そして、最終話へ向けても布石もばっちり。運命に引き裂かれたかのようなネイトとクルーエル。一反の定められた別れを強制され、それでもお互いを信じ続けるふたりの想いが奇跡を呼ぶわけですね。借り物だった夜色名詠から、自分だけの名詠を生み出すための大切な想いをいくつも受け取ったネイト。これまでのすべてを積み上げて、彼自身の詠をどのように紡ぎ上げてくのやら。がんばる少年の想いに幸あれ!

hReview by ゆーいち , 2009/03/29