白山さんと黒い鞄

2009年8月16日

stars だから、コウ、覚えておけ。シロさまがおまえのことをいくら信じていても――いや、だからこそ、九衛はおまえのことを絶対に信用しない。

クラスメイトの白山さんは不思議だけれど可愛らしい女の子。平沢衡はひょんなことから彼女の秘密を知ってしまう。白山さんがいつも抱えている黒い鞄には――女の子が住んでいた!? さらに、その鞄からとんでもないトラブルのタネまで飛び出して、衡は白山さん自身の問題に巻き込まれていく。そして、衡が所属する図書館部の厄介な部長と部員まで首を突っ込んできて事態はどんどん混迷の度を深めていって……。

まだだ、まだまだ黒くない!

鈴木鈴の新シリーズは割と明るい出だしで開幕。まぁ、前科が色々あるので、どこで反転して鬱々真っ盛りなストーリーになるのか分かったものじゃありませんが(笑)

おどおどしながらも決めるところでは決める、でもやっぱり天然入ってるぽけぽけな白山さんと、彼女をひたすら守る生真面目だけどわがまま、世間知らずな九衛。そんなふたりと関わってしまった衡は、新しくできた友人の問題を解決しようと力を貸すけれど、彼女たちの抱える事情というのは、これまた非日常なものでさあ大変。

もっとも、衡自身も「呪い」と呼ぶような不運体質だけれど、それがあるからこそ白山さんの事情を聞いても引いたりしなかった? それ以外で彼の体質、あんまり物語に関わってきてないですよねえ。これからの伏線として用意されたのでしょうか?

けれど、そんな白山さん、自分の問題を誰にも明かせない事情は、その特異性だけでなく、彼女自身の心に刻まれているっぽい苦い過去も大きな要因になってそう。だからこそ、九衛は白山さんをひたすら他人から遠ざけようとするわけで、傍若無人に見える九衛の行動もそんな理由を知ってしまうと憎めない……、かな? まぁ、大切なご主人を取られまいと必至になってる様を愛でるという感じに近いような気もしますが。

最終的に、衡は他人との深い関わり合いを恐れていた白山さんの心を少しだけ開くことに成功しますが、まだまだ前途多難? 今後、彼女と一緒の時間が増えていけば巻き込まれるトラブルは加速度的に難儀なものになっていくだろうし、衡自身の問題が今後尾を引く可能性もあり。何よりも、白山さんの笑顔を独り占めしようなんて欲が出てきたらもっと大変になっていくんだろうなあ。黒くならない程度にシリアスにラブコメにがんばってほしいですね。

……いや、別に真っ黒な展開が来ても驚かないんですが。

hReview by ゆーいち , 2009/04/11

白山さんと黒い鞄

白山さんと黒い鞄 (電撃文庫)
鈴木 鈴
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