剣の女王と烙印の仔〈1〉

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stars ぼくは奴隷なんだろ。ミネルヴァのものなんだ。逃げるわけない。この先ずっと――その死を、喰らってやる。

周囲の人間の命運を喰らう《獣の烙印》をその身に宿した少年クリス。敵以上に味方にこそ、その存在を恐れられる彼は、その素性を隠しつつ傭兵として戦場を放浪していた。そして、クリスは少女と出逢う。戦場に似つかわしくない白い衣を纏い、身の丈ほどもある大剣を携えたミネルヴァという名の死神。未来を見ることのできる彼女に、死を与えるはずだったクリス。しかし、ふたりの運命はクリスの持つ烙印によりねじ曲げられ、さらなる過酷な試練へと導かれて行く。

逃れられない運命に、使命に、主人公たちが翻弄されるお話、再び。

いやぁ、こういう黒い方向での杉井作品が読めるのは嬉しいですね。『火目の巫女』や『死図眼のイタカ』に比べればまだまだ温い部分があるので割とダークな方向にやや振れたといった印象ではありますが、MF文庫Jというレーベルのイメージからすると、これはかなりシリアス寄りなシリーズになるんじゃないかという予感です。

それでも、主人公クリスや、彼との出会いによって運命を変えられ、成りゆきのままに彼を従えることになってしまったミネルヴァたちが属する銀卵騎士団の面々には、重苦しい雰囲気が漂う世界の中でも明るさや余裕、そして騎士団という言葉よりは家族に近い感じの温もりがありますね。その辺は団長であるフランチェスカ嬢の人徳とか、その破天荒な言動ゆえのフリーダムさに救われてる部分も多いんでしょうね。キャラの性格付けやら配置やらも他の杉井作品と似たり寄ったりな感じで、代わり映えがないような、あるいはその関係が把握しやすくて助かるのやら。

クリスの背負う業もそうですが、同様にミネルヴァに課せられた使命も同じように彼女自身の運命を蝕んでますね。ミネルヴァの場合は、彼女と半身のような妹のシルヴィアという存在もその小さな肩にのしかかっているわけで。死という未来を痛みにより知る代償として、彼女自身の心と魂に刻まれてきた傷の数々が、運命をねじ曲げる烙印の仔であるクリスと出逢ったことにより、癒やされるのか、はたまた新たな傷を生み出す刃となるのか、それはこれからも展開にかかっているのでしょう。

幸福を喰らうという烙印の性質からすれば、未来において誰もが幸せな結末を得るというのは叶わないかもしれないですが、すでに死という結果的には不幸と取れそうなミネルヴァの運命が変わっているだけに、救いのある未来を望んでみても悪くないのかなとも思います。

幸せを喰らう獣と、命を削られる痛みに苛まれる少女を世界はどう導くのか。廻り続ける巨大な運命の歯車は、今以上の過酷さでもってふたりを巻き込んでいきそうですが、それに抗うと決めたふたりの意志と、結ばれた絆の強さは信じられるものであると思います。

hReview by ゆーいち , 2009/05/09

剣の女王と烙印の仔〈1〉

剣の女王と烙印の仔〈1〉 (MF文庫J)
杉井 光
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