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クリスナーガ

stars なあ、イヴ、聞いてもいいか? ぼくが存在したことに、意味はあったかな?

真っ暗闇の中で目覚めたぼくは、偶然手にした古い本から少女を召喚してしまった。イヴという名の高慢な少女はかつて世界を救った「伝説の戦乙女」であり、彼女を呼び出したぼくは救世主扱い。自分の名前さえも忘れてしまい、たったひとりこの世界「クリスナーガ」へと放り出されてしまったぼくは、理由も分からないままに、危機が迫るこの世界を救うため大事件へと巻き込まれていくことに……。

記憶喪失の主人公が、右も左も知らぬ世界で、迷い、悩み、傷つき、苦しみ、失われた自分を探していく物語。

運命か偶然か、彼――クロムくん(仮称)――が呼び出してしまったイヴとの、二人三脚の救世のお話かと思いきや、そのイヴがまた自己中で傲慢で、ツン成分の固まりみたい(ただしクロム限定)な性格をしてるので、クロム視点で話が進むと風当たりがきついですねえ。

そして、イヴがヒロイン格かと思っていたら、そんなことはなくて、クロムの付き人として身の回りの世話をすることになったエレという無表情な少女との関係こそが、ふたりが見失ってしまっていた自分を取り戻すための大きな鍵だったという。といっても、クロムはエレの心を抉るような言葉を吐いただけで、結局のところ、エレ自身がクロムを通じ、世界の危機を乗り越えて、自分でこうありたいという自分を取り戻したような感じ。逆にクロムの方といえば、異邦人で矛盾を抱えた存在という自分自身に思い悩むあまりに停滞し、ただそこにいたという、それだけでなんだか自動的に世界が救われてしまったかのような印象。

クロムがこの世界に抱いた印象や違和感の正体が何も語られず、ただ存在矛盾という彼の存在自体が特別であるという説明でくくられてしまってるのが唐突かつ説明不足かなあ。世界の有り様に対するツッコミとか、彼がどちらかというと地球人寄りの常識を記憶喪失ながらに身につけていたこととかから、現代とかからの異世界への召喚ものかなあとか予想しながら読んでいただけに、謎が謎のまま残されるというのはすっきりしないラストでしたかね。

自虐的な嗜好でうじうじしていたクロムが、最後に前向きな意志を抱いていましたが、そもそもの本当の自分探しが放置されてるようなあたり、これが伏線となるのかうっちゃってしまったのか、続刊次第というところでしょうか?

hReview by ゆーいち , 2009/06/14

クリスナーガ
クリスナーガ (電撃文庫)
小林 三六九
アスキーメディアワークス 2009-05-10
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