電波女と青春男〈2〉

stars エリオット、私、やってみたよ。何とかしてみようって、頑張ったよ。これで、やっつけられたのかな?

命がけのE.T.ごっこを経て、藤和エリオはぐるぐるとくるまっていた布団から出てくることを決意。そんなエリオの社会復帰の道は、なぜか真とともにあるようで、どこへ行くにも真の傍を離れない。貴重な青春ポイントをエリオにぐんぐん吸われているような……。そして、女友達のドキドキ自宅訪問イベントが発生したり、女々さんの秘密と遭遇したり、それもこれも含めて、青春まっただ中です。

年相応に見えない大供(笑)な女々さんが、物語の最後をかっさらっていった感じの第2巻。

エリオの引きこもり生活については、なんだかんだで前巻で真がケリを付けてくれたのですが、道のりはそんなに甘くない。社会復帰のためには様々なハードルが待ち受けていて、さらにはエリオと関わっているおかげで真のスクールライフにもほんの少し暗雲が……?

というのは、彼を気になるリュウシさんの微妙な女心といいますか、やはり気になるあの子が別のこと終始くっついてたりしたら心中穏やかでないというか。エリオのこの街における立場とかも、様々な人物からネガティブな評価を通して、こりゃ大変だなあなどと思いつつ、それでもそんな彼女を支えようとするひともいることは確かで。

と、エリオのバイト先のお婆ちゃんが登場するあたりから、真やエリオの物語と同じように、女々さんの物語も動き始めていって。何をやってるか良く分からなかった女々さんの素顔が少しずつ垣間見れてるのと、まったく大人げないようだった彼女の、彼女なりの愛情の示し方だとかが語られるにつれて、やたらと共感してしまいますね。というか、自分の昔の思い出とかとダブらせてしまうと女々さんの気持ちも良く分かってしまうんですよねえ。ああいう破天荒な形で、祖母を元気づけてやるとかそんなイベントはなくても、長生きしてほしいとか、そんな気持ちは良く分かる。

そんな感情移入をしてしまうものだから、いくら女々さんがヒロインじゃないんだといっても、今回の物語は彼女のための物語だとしか思えないわけで。距離の開きまくっていたエリオとの気持ちも、少しずつ縮まってきてる描写も見えて、社会復帰を目指しているのはエリオだけでなく、母親としての女々さんもそうなんだなあとかしみじみと。

でもまぁ、エリオもかわいいですよねえ。布団にくるまって、宇宙人的な扱いを受けていた頃とはうって変わって、真に懐きまくっている今の彼女はなんとも保護欲をかき立てられるというか。そんな慕う感情をなんとはなしに理解しているからこそ、真も面倒を見ていて、逆にそんな真に対して自分を見てアピールをするリュウシさんもまたかわいい。肝心なところでリュウシさんとの距離を縮めきれない真だけれど、エリオの件がある限りすんなりと青春ポイント大量ゲットなイベントは起こせなさそう。そんな不器用な彼らが織りなす青春な物語、たしかにみーまーとは正反対なお話ですね。

hReview by ゆーいち , 2009/06/15

電波女と青春男〈2〉

電波女と青春男〈2〉 (電撃文庫)
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