えでぃっと!―ライトノベルの本当の作り方?!

2009年11月20日

stars つらいとき、かなしいとき。希望をくれる小説があった。笑わしてくれる小説があった。そういう小説を僕は書きたいと思っている。

えでぃっと!―ライトノベルの本当の作り方?!(書影大)

羽沢雛太は中学三年生の時に一迅社文庫大賞を受賞し、今ではラノベ作家と学生、二足の草鞋を履く高校生。新作の執筆に行き詰まっていたある日、交代となった新担当編集の片桐文香がやって来る。雛太と文香のぎこちない二人三脚による執筆活動。さらには新シリーズの立ち上げには、挿絵を担当するイラストレーターも加わり波乱の予感がひしひしと……?

[tegaki font="poptai.ttf" color="SandyBrown" strokesize1="2″ strokecolor1="NavajoWhite"]ラノベ、書こうよっ![/tegaki]

昨年あたりから割と目に付くようになってきた作家を主人公にしたお話。新シリーズと銘打ってあるので、このノリで今後続いていくのかな?

1冊を通して、ラノベ作家・柳瀬ひなたこと羽沢雛太が、同年代の新人担当編集・片桐文香と、これまた同年代のイラストレーター・宝泉院弓佳、幼なじみの高木陽菜らとともに新しい作品を作っていく課程を赤裸々(?)に描いてみせます。

ネタ的には、お話としてのフィクションも多分にあるんだろうけれど、業界を取り巻く環境とか、作家の自身の立ち位置とかモチベーションとか、あるいは他の作家とのやりとりとか、妙に生々しい要素もあったりして、深読みしてみたりすると楽しいひとは楽しいのかも?

逆に、そんな暴露ネタ満載っぽい前半とは一転して中盤以降は物語を書くということ、絵を描くということ、本を作っていくということなんていう話題に対して、雛太や弓佳がどう向き合っていくのかというそんな流れでしたね。まぁ、ここでは芸能の神さまであるイツキの存在が利いてきて、ぎりぎりまで追い詰められたときの焦燥だったり苦悩だったり、ネガティブな方向とは距離をおいて描かれているように感じましたが。むしろ、雛太よりもイラスト担当として配された弓佳の身に降りかかった問題の方が時期的にタイムリーで真実味を覚えたりしましたね。

もちろん、雛太自身も物語を書く理由を見失って迷走しかけたりするけれど、その根底にあるのは、やはり「好き」という気持ち。その「好き」が様々な障害を乗り越えつつ結実していく様を素直に楽しめれば良いのかなと感じます。

けれど、苦労を重ねてようやく完成した作品が発売されるまでが製作期間。最後の最後に愉快なオチが待っていたりで、これもまたどこかであったんだろうなと思いつつ、本を作ることの楽しさや辛さ、喜びや悩みといったものを存分に楽しませてもらいました。

ところで、今後のシリーズ展開はどんな風に行くのかなあ。作中であったような LOVE 寄せがほんとになされそうだけれど、男1人、女3人なこれで恋愛絡みの騒動の一つや二つ起きなきゃ嘘でしょ的なシチュエーションを、美味しく料理していただきたいと思います。

hReview by ゆーいち , 2009/11/08