ラッキーメイド天くん

2010年4月23日

stars 僕は大黒天の生まれ変わりで、幸運なんだろ。千早ちゃんはきっと勝つよ。だって、幸運がそばにいるんだからさ。

1億円でお金持ちに「買われて」しまった大黒あまね。でも彼を買ったのは小さいころ結婚の約束をした伊集院千早お嬢様だった! 千早は天にメイドとして働くことを強要。メイド服に身を包んだ天は清楚で愛らしい女の子に大変身! その日からメイドとして働く天だが、どうも彼の遺伝子が狙われてるらしく、あちこちから迫られ大ピンチ! 天の運命は!?

ラッキーメイド天くん(書影大)

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="HotPink" strokesize1="4″ strokecolor1="pink"]なんという逆Myメイド……[/tegaki]

や、物語の始まりとしてはそれこそ『ハヤテのごとく!』だったりして、こりゃまたわかりやすいパロディかと思っていたら ((……各章題とかそのノリ全開ですけど、あんまり上手くないような(笑) ))、主人公の天(注:男)がさせられるのは執事ならぬメイド、というぶっ飛んだ展開で、なるほど、このむちゃくちゃささ加減はさすが、わかつきひかるといったところでしょうか。

お話の流れ的には行くアテもなくなった天が、幼少時代に淡い想いを交わし合い、今や押しも押されぬ大企業グループのトップへと上り詰めた千早と再会。そして、天の身にかけられた、幸運を呼ぶという出所不明のうさんくさい情報を真に受けたライバル会社との経済戦へと発展していくという、よく分からないうちにスケールがどんどんでかくなっていく感じ。終盤の企業買収を巡る切った張ったは、さすがに資料をよく理解しないままいいとこ取りしたんじゃないかっていう説明文満載な印象があって、ノリ切れないのですが、そこに至るまでのいちゃいちゃ成分だったり、お得意のえろすな部分だったりは持ち味発揮しまくりといったところ。

わかつき作品では毎度毎度のことですが、表現が直接的なんですよねえ。ラノベ過去のHJ文庫から出ていたシリーズもそんな感じでしたが、なんというか、ファンタジーを求めてこういうコメディに手を出しているのに、生々しい台詞を可憐な女の子がのたまうのは、なんというか、その、困る(笑) その辺の自重しなさ加減が氏らしい感じを与えているのですが、もうちょっと物語にあわせて描写もマイルドにしてほしいかなあと。ああ、でも、純粋培養箱入り娘なヒロインの天は、その辺が純真無垢でそういった台詞は口にもしなかったのか……? これが美少女文庫とかならそのままどんどんふたりで堕落していくものを、ギギギ……。

ともあれ、流されまくっていた天が、主人にして愛しい女の子・千早の絶体絶命の窮地に自らを奮い立たせ男を見せる展開はありきたりでも爽快愉快。ラブコメ的にはこれからも天を狙うセレブなお方が続々とやってきそうですが、未だ清い関係の天と千早が恋人らしく深い仲になる日は、果たしてやってくるのでしょうか?

hReview by ゆーいち , 2009/11/14

ラッキーメイド天くん

ラッキーメイド天くん (HJ文庫)
わかつきひかる
ホビージャパン 2009-10-31