C3‐シーキューブ‐〈9〉

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stars 気付いたばかりだったのだ。知っているつもりでも、まだまだ知らないことばかりだったのだと。家族のこと、昔のこと、家のこと――もっといろんなことを聞きたい。もっといろんなことを話してほしい。無機質な文字ではなく、いつもの声で、話してほしいのだ。

春亮の家に来て初めてとなるお正月に興奮するフィア。早速みんなで初詣に行って、おみくじ、もちつき、書き初めなどを大いに楽しむのだが、いつものメンツなだけに普通のお正月イベントで終わるはずもなく…。さらにその途中で一行は五寸釘と藁人形を持った謎の巫女さん姿の女の子たちと出会う。聞くところによると誰かに呪いをかけているらしい。当然それをやめさせようとするのだが、その時、フィアの大切なものが奪われてしまって!?謹賀新年!第9弾は賑やか&波乱のお正月です。

たいせつなもの、ゆずれないもの。

前巻で新レギュラー追加、そして新たな局面へと物語が進むかと思ったら、小休止的なエピソードだった第9巻。新たな禍具や、その持ち主が登場したりしますが、あまり殺伐としてなく、逆に、終わってみたらなんだかいい話だったような気がしなくもなく……?

物語の進むテンポはやや足踏みをしているような感じがしますが、作中の時間は着実に進んでいって、クリスマスに続いて、年越し年始のお正月イベント。人間の文化に触れ、初体験のイベントに目を輝かせ、少しずつ自分があこがれる人間との距離を縮めて行きつつあるフィアの成長がそこかしこで感じられますね。

今回の騒動にしても、春亮の身に降りかかった災難を解決する過程で気付いたこと、思ったこと、感じたことを、率直にその原因である千早や伍鈴に告げてみたり。むしろ、その言動は、こと戦いにおいては自信の機能を遺憾なく発揮する彼女ではありますが、相対し、言葉を交わすという段階においては、ずいぶんと人間じみていると思えます。作中でもどちらかというと禍具同士であるはずの伍鈴との間に決定的な違いを感じてみたり、千早との間で交わされる家族についての会話に、フィア自身のあこがれの色を見てみたりと、そういう意味で呪いはまだまだ解けずとも、ゆっくりと確実に彼女は自分の夢を叶えてきているんだなあという感じがしますね。

一方の千早や伍鈴は、春亮と彼の家の集まってきた禍具たちとの関係ほど打ち解けていないようで、すれ違いがあったり、根本的な価値観の違いから危うくも取り返しの付かない過ちを犯しそうになったりと、まだまだ未熟な関係。ひさびさに見せ場のあった白穂とサヴェレンティのようなパートナー関係を築けそうなふたりですが、その先輩たちに似て、千早たちの性格もいろいろと難儀なところがありますね。ラストで明かされた千早の正体、というか実年齢には驚いたりしましたが、春を迎える頃にはさらに春亮の周辺は賑やかになること間違いなしってところですね。

そうして積み上げていく毎日が、どれだけ大切なものなのか。人間である春亮は言うに及ばず、彼と過ごしてきた時間の長いこのはや黒絵はもちろんのこと、彼のことをもっともっと知りたいと願うフィアも十二分に知ってしまったんでしょうね。少しずつ彼のことを知り、そして自分のことを知ってもらい、その存在をただただ肯定され、感じる幸せがずっと続くものであることを願うことを、誰が否定できるのでしょうか。

反動で今後の展開が黒くなったりするといろいろと怖いのですが、この絆は、そう簡単に壊れるものじゃないだろうなとも、そう思ったりもするのです。

hReview by ゆーいち , 2010/04/06

C3‐シーキューブ‐〈9〉

C3‐シーキューブ‐〈9〉 (電撃文庫)
水瀬 葉月
アスキーメディアワークス 2010-03
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