ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス

stars 所詮ゲームなんだから何でもありだ。殺したければ殺すし、奪いたければ奪う――そんなふうに言う奴には、嫌っていうほど出くわしたよ。一面ではそれも真実だ、俺も昔はそう思っていた。でも、そうじゃないんだ。仮想世界だからこそ、どんなに愚かしく見えても、守らなきゃならないものがある。俺はそれを――大切な人に教わった……。

[tegaki font="dfgot_p.ttc" color="LightSeaGreen" strokecolor1="white" strokesize1="2″ strokecolor2="MediumTurquoise" strokesize2="4″]未知なる世界、新たなる冒険[/tegaki]

禁断のデスバトルMMO『ソードアート・オンライン』から現実世界に戻ってきたキリト。彼は攻略パートナーであり、想い人でもあるアスナのもとに向かう。しかし、結城明日奈は、あの悪夢のゲームからまだ帰還していなかった。困惑と絶望に包まれるキリト。唯一の手がかりは、鳥篭の中で佇む“妖精姿”のアスナという謎の画像データのみ。どうやら彼女は、高スペックVRMMO“アルヴヘイム・オンライン”というゲーム内に囚われているらしい。キリトはアスナを救うため、飛翔する妖精プレイヤーたちが交錯する“ALO”に飛び込んでいく…!!WEB上でも屈指の人気を誇った『フェアリィ・ダンス』編、スタート。

『ソードアート・オンライン』をクリアし、現実へと帰還したキリト。しかし、同時にクリアし、再開を誓ったはずのアスナは未だその意識を取り戻してない。そして、別のゲームの世界内で彼女によく似た姿を見かけたキリトは、有無を言わさずその世界へと飛び込んでいく。アルヴヘイム・オンラインへ。

ということで、タイトルに『ソードアート・オンライン』を残しているのに別のゲームの攻略が始まってしまいましたよ? アスナを助けるためとはいえ事前の準備も何もなく、いきなり飛び込むその行動は無謀が過ぎるかと思ったら、よく分からない事情によって、かつて『ソードアート・オンライン』で培った最強レベルのパラメータが付いてきて、一気にゲーム内でのトップレベルの実力とかもうね、さすがキリトさん、別のゲームでもぱねえっす。

ともあれ、前の世界のように、死んだらそれまでという絶体絶命なゲームではないだけに、割と無茶をしているような気がするキリト。そりゃあ、愛しの姫君が囚われの身となっているという確信の元に動いているから仕方ないだろうし、何よりも現実世界での彼とアスナの間に立ちふさがっている障壁=須郷の陰険さといったらないですね。

でも、ゲーム内での姿であるオベイロンのときの言動でもそうだけれど、陰湿さが先だって、ラスボスらしい威厳というか強さが微塵もなさそうなのが、彼の行く末を容易に暗示させてくれますね。何かにつけて茅場、茅場とかの天才の後塵を拝しまくった恨み辛みを吐き出している辺り、妄執に囚われ、復讐がてらにあのゲーム世界を生み出して、狂気にして禁忌の行為を行っているのかな。けれど、『アルヴヘイム・オンライン』のゲームシステムの基幹とデータが『ソードアート・オンライン』からの流用って、それ、あんた、茅場の手のひらの上で踊らされているだけ何じゃあ……? この計画さえも茅場は想定し、須郷の予測を超えたシナリオを仕込んでいてもおかしくないような気がしますね。

囚われのアスナは文字通り篭の中の小鳥。何もできず救出を待つだけのお姫様かと思いきや、やっぱりかつての戦士であったアスナと同じ、未だ折れない心を持ち続けているようで一安心。虎視眈々とチャンスを狙う彼女にようやく訪れた転機。この期を逃さず、脱出へとつなぐことができるのかどうか……。待て、次巻! って相変わらず良いところで続くなあ。

しかし、主人公のキリトさんのフラグ立てっぷりは今回も健在ですな。妹の直葉の兄への想いに気付かないまま、ゲームの中でもパートナー関係を結んだり。ゲーム内での直葉の姿であるリーファも、キリトに惹かれるものを感じているようだし。真実を知ったときは、また修羅場が起きそうな予感。というか、万事解決して現実世界が中心に回るような生活に戻ってきたとしたら、リアルで恋のバトルが勃発しそうですね。……それはそれでっ!

次巻も楽しみです。

hReview by ゆーいち , 2010/04/10

ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス

ソードアート・オンライン〈3〉フェアリィ・ダンス (電撃文庫)
川原 礫
アスキーメディアワークス 2009-12-10