ギャルゲーマスター椎名

stars いいこと? 私たちは究極のギャルゲーを作らなければならないの。そのためにはギャルゲーを百パーセント理解しなければならないわけ。G研に入ったからにはギャルゲーと運命を共にする覚悟でいなさい! ギャルゲーと深い関係を築いて、ギャルゲーと結婚して、最終的にはギャルゲーと心中しなさい!

ギャルゲー、それはいのち。
その全てを極めし者は、世界法則ゲームシステムを掌握し、あらゆる選択肢を見透し、決して迷わず、物語に囚われた姫君ヒロインたちを救い出す──。
この偉大なる力は一人の少年に授けられた。少年の名は、椎名雄介。
またの名を『ギャルゲーマスター椎名』。眠れるその力が開花したとき全宇宙に『約束された結末エンディング』と『開放クリア』が訪れる──。
……って持ち上げて、勝手に宿命を背負わす幼児体型でドSな先輩がいるんですが、どうしたらいいでしょうか?

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="pink" strokesize1="6″ strokecolor1="white" strokecolor2="LightPink" strokesize2="8″]ええい、ギャルゲーギャルゲーうるせー![/tegaki]

みんなでギャルゲー作ろうよ! といきなり謎の同好会『ギャルゲー研究会』に弱みを握られ引きずり込まれ、隠したい過去まで暴かれてしまった主人公・椎名雄介の受難の日々! だけど、自分以外のメンバーが女の子しかいないって、それってやっぱり勝ち組じゃね!?

ミニマムデビルと学校で知らぬ者のいない恐るべき先輩・桐ヶ谷京子を頂点にした通称G研のヒエラルキーの最底辺に位置することになった雄介は、いじられ、いびられ、こき使われ、期待の新人『ギャルゲーマスター』の呼び名も名前負けしている体たらく。それもそのはず、雄介自身は、そのあだ名が付けられたときの苦い思い出から、ギャルゲーに興味を持てなくなっていて……。

と、そんな彼の心中などお構いなしに進行するギャルゲー制作。唯一の男手にして、期待の新人という思い込みのおかげで、雄介が巻き込まれるハプニングもなんともギャルゲーギャルゲーした美味しいものばかり。まぁ、相手がギャルゲーのヒロインよろしく、あっさりとフラグが立つような攻略難度の低いメンツは一切おらず、そのたびになんだか不名誉な扱いに堕していくのはそれこそギャルゲー主人公のお約束というか。

物語の展開的にも、ゲームを作るという目標に向かってメンバーが邁進していくものの、これといって大きな難関が待ち受けているというわけでもなく――良くある難関は、良くあるパターンで待ち構えているのですが――あっさりと達成されたような感じがしますね。京子先輩をはじめとしたギャルゲー部の女の子5人となんだかいちゃいちゃしてたらできちゃった、みたいな、おい、それでいいのか、ゲーム制作なめてるんじゃないのかとk思ったりもしますが、そこら辺突き詰めていったら、どれくらいかかるのか分かったもんじゃないですからね、結果が出るのが次巻に持ち越しになったりしたので、本格的なトラブルはそれから起こりそうな気はします。

しかし、雄介は当初はあれだけどんな手を使っても、G研を抜けてやると息巻いていたのにあっさりと自分の居場所として定めてしまったなあ。父親との微妙な確執みたいなものもあったりして、ギャルゲーに対して距離を取っていたりとかそんな背景があれば良かったのになあ。『ギャルゲーマスター』と呼ばれるだけの実力もまだ見せていないし、その辺、これから(本人が望まない)名誉挽回があったりするんでしょうかね。

hReview by ゆーいち , 2010/04/11

ギャルゲーマスター椎名

ギャルゲーマスター椎名 (電撃文庫 す 8-10)
周防ツカサ
アスキー・メディアワークス 2010-04-10