ハイスクールD×D 6 体育館裏のホーリー

2010年9月5日

stars 難しいことはわかりません! でも、アーシアは俺の仲間です! 家族です! 助けたいんです! 俺はもう二度とアーシアを失いたくない!

二学期です。美人の転校生です。体育祭ですっ!
―しかしイッセーこと兵藤一誠は、それどころじゃなかった。アーシアに求婚者が現れたのだ。上級悪魔ディオドラ・アスタロト。現魔王ベルゼブブの家柄だ。
どんなにイケメンだろうと、どんなに家柄がよかろうと、俺は絶対認めない。ましてやアーシアをレーティングゲームの賞品にする悪魔なんてっ! イッセーの血が怒りに沸き上がる!
「俺ん家のアーシアを泣かすんじゃねえぇぇぇっ!」
愛と熱血、そしてやっぱり煩悩たっぷりで贈る、学園ラブコメバトルファンタジー快走。

[tegaki font="mincho.ttf"]乳龍帝 爆・誕!![/tegaki]

なんだ、その煩悩塗れな二つ名は。ドライグもマジ泣きするわ。というか、悪魔と堕天使の最高実力者が揃いも揃ってバカな歌を作るなああああああ! と、終盤の、あまりと言えばあんまりな展開に、それを見守る木場ではないですが、ポカーンとしてしまった第6巻。

いや、それはそれとして、今回は真面目に熱血バトルものとして、燃える展開でしたね。一誠の主人公力が真面目に発揮されたというか、ここまでマジになったのは……ヴァーリと前にやりあった、おっぱい半分戦争(仮)のとき以来か。あれ、つい最近じゃね?

ディオドラとのレーティングゲームをセッティングされたリアス率いるオカルト研究会の面々。ディオドラの強引な求婚への対応に四苦八苦しているアーシアを守るために、啖呵を切ったは良いけれど、なぜか彼女がゲームの勝敗の賞品になったり。アーシアをことのほか大切にしている一誠は、そんなディオドラの態度に怒り心頭、全力でぶちのめしてやると、士気高々に戦闘のフィールドへと赴くや、そこには用意周到な罠が張り巡らされていて……。

いやぁ、ここまで下衆な敵キャラだと、それをぶちのめす展開も爽快の一語に尽きますね。甘い言葉と真摯な態度の裏に隠された、まさに外道なディオドラの所行。彼の最期には一縷の憐憫も浮かばないあたり、使い捨てキャラ的な扱いだったなあ、と。このゲームを狙って、『禍の団』も、オーフィス自らがお出ましと、ラスボス級のキャラクターが続々登場。そして、幹部クラスのキャラクターはあっさりと退場していったり。強者がゴミのようだ!

まぁ、そんな三下悪役を倒した程度ではお話が終わるはずもなく、そこから始まる絶望的な展開。アーシアがあんなことになって、思いっきり希望を打ち砕かれた一誠たち。いやぁ、これは容赦ない展開が来たなあと思っていたら、そこから一誠に起こる激変もまた壮絶。これまでスチャラカに伝説の力を手に入れていたかと思ったけれど、赤龍帝の力はそんな生ぬるいものではなくて、絶望とそれを塗りつぶすかのような想像を絶する怒りによって解き放たれる最後の力《覇龍》ジャガーノートドライブ。あらゆる力を圧倒する、まさに最終兵器的なこの力。かつての所有者たちの呪詛にも似た叫びと共に発現した《覇龍》を、御することなど当然叶わなくて、暴走したまま果ててしまうのかと思ったところで、序盤に一誠がされたインタビューが活きてくる! けど、その内容が、とほほすぎて、それまでのシリアスな空気が完全に消えてしまいましたよ、はい。

けれど、さすがに、あのままアーシアを失うとかそんな展開になっていたら、この物語としては異質すぎる展開でしょうし、こういうおバカだけれど、だからこそ一誠らしいオチの付け方というのは、気持ちよくもありますね。……バカすぎるけど。

そして、なんだかんだでお互いの力を認めたった一誠とヴァーリ。かつては一誠を見下しまくっていたヴァーリだけれど、彼なりに、自分とは異なる一誠の強さに敬意を払ったかのような言動でしたね。いつか決着を付けるべき宿敵としてのふたり。赤と白の龍の勝負の行方がますます楽しみになりました。『禍の団』の思惑とは外れた形で動き始めているヴァーリたちとは別に、表だった動きをしていなかった英雄派とやらが、今度は敵として出てくるのかな。名だたる人物たちをモチーフにしたキャラのようだし、何でもありになってきたなあ。

タイトルの「D×D」の意味もようやくはっきりし、お話的にも一段落付いた本巻。何よりも、色々、ひどい目に遭ってきたアーシアが、最後の最後に自分から積極的に一誠に想いを打ち明けるくらいにまで強くなったのが心に残るエピソードでしたね。幸せになったんじゃなくて、これからもどんどん幸せになっていく、そんな過程にいる彼女の姿は本当にまぶしいですよ。

hReview by ゆーいち , 2010/04/18