生徒会の七光― 碧陽学園生徒会議事録7

stars いーい? いつまでも、私に甘えてちゃ駄目なんだよ? この偉大な会長の庇護下にいられるのは、あと半年も無いんだからね! 生徒会の権力を使えるのは、この学校でだけなんだからね! 七光にばっかり甘えてないで、皆、自立しようね!

ようこそ、私立碧陽学園生徒会室へ!美少女役員四人+おまけ一人、生徒諸君のため、今日も汗水流して駄弁っております!!
今回、ひとりの少女が己のこれまでの行いを悔い、宣言した。
「ここは俺のハーレムでは、ありません」
――衝撃だった。季節はうつろい、刻一刻と迫ってくる「その時」。だけど俺達は、私達は、現実から目を逸らしちゃいけないんだ。
そして、少年……杉崎鍵は、ハーレム放棄宣言のみならず、さらに告げるのだった。「残響死滅……」と。
気になるあの人やその人も登場して、ついに物語は動く――か?

相変わらずの嘘予告。これ、どこまで信用して良いものやら……って思ったら部分部分を抜き出したら結構当たっている。ふしぎ!

そんな感じで本編も数えること7冊目。卒業を間近に控えた生徒会の面々は、相も変わらずの日常を送っているようでいて、決して避け得ぬ別れの時間の到来を少しずつ感じさせる言動も見られるようになってきたり。生徒会長のくりむさん、おバカだおバカだといじり倒されていながら、時々、妙に悟ったことを言うから侮れません。物語の始まりは、彼女の誰かからの借り物の言葉からが常でしたが、そろそろ初出不明の名言が出てきてもおかしくない状況ですね!

お話は本編は毎度毎度のギャグ三昧ながら、杉崎の義妹・林檎の投入と、プロローグ、エピローグでは杉崎と幼馴染みの飛鳥の逃避行(?)が描かれていたり、これまでの生徒会の仲良し空間に、外的な要因がかなり入り込んで来ている感じ。これもまた、定められた終わりに向かって、いつまでも変わらないでいられるわけではないというお達しなのでしょうか。林檎のキャラが真冬互換というか、真冬が林檎互換というか、そのキャラかぶりさえもネタにしつつ、当の林檎は妹視点、ブラコン満点の言動で、生徒会女子の面々をちぎっては投げちぎっては投げの大活躍。まさか、千弦さんへにとっての天敵がこんなところにいるとは……ッ!

そんな林檎に知られたくなかったところまでにつまびらかに語られてしまった千鶴さんの赤面具合とテンパり具合が大変眼福。珍しいものを見せてもらったことと、やっぱり彼女も杉崎ハーレムの一員と化しつつあるのだなあという実感とでにやにや。それ以前に見せてくれた、しおらしく愛らしい、愛人役も妙にハマっていたりで、かわいらしさ大増量の本巻でしたね。他のキャラ? いつも通りいじられてる姉妹と、いつも通りみんなに愛されている生徒会長はお変わりないようで。

さて、ある意味本編なプロローグ&エピローグ。卒業式直前に、学校を飛び出して温泉旅行とか、駆け落ちする気満々な飛鳥と、そんな腐れ縁の幼馴染みに引っ張り回されつつも悪い気のしない杉崎。時間的な付き合いの長さを実感させる阿吽の呼吸で繰り広げられる会話と、深くお互いを知っているからこそ話すことができるお互いの根っこの部分の話。まっすぐに変態性欲魔神であろうとした杉崎の生徒会での振る舞いを、自傷行為と切って捨てる飛鳥の言葉。その言葉を否定できないながらも、自分の行いを言葉の上では肯定するしかない杉崎。もう、この会話が始まった時点で、杉崎は飛鳥に白旗あげているような感じでしたが、止めとばかりに差し込まれる、彼女の最後の一言が、とんでもなく残酷ではありますよね。誰をも幸せにしたいがゆえに、ハーレムを目指す杉崎。けれど、そこには完全な幸福なんてありはしないという飛鳥。自らを反証として、杉崎の理想の脆さを指摘する彼女は、逆に杉崎自身がそれを認めることができないがゆえに、その役を買って出たようにも思えます。

旅の途中で次巻へと続く物語。卒業への残り時間はあとわずか。別れの時は迫りつつあり、そしてそのときが訪れたとき、これまで築いてきた生徒会メンバーの間の絆は、皆の間に何を残し、何を刻んでいくのでしょうか?

……とかシリアス寄りに進んでいても、最後はぱーっと大団円になるのはきっと確定なんでしょうけどね。どうせなら、思いっきりのハッピーエンドを見せてください。期待しています。

hReview by ゆーいち , 2010/04/23