彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き!

stars もう、戻れない。戻りたくない。見ているだけの僕になんて。

春の陽気に誘われてフラフラ街を歩いていたら、いきなり拉致されてしまった僕。えっ? なに? いやいやちょっとナニスルンデスカ!? ……ふと我に返ると、なぜかラジオの収録スタジオに。呆然としていると、一人の美少女がスタジオに入ってきて――ま、まさか!憧れていた人気アイドル声優の音無まどかさんじゃないかっ……。えええええっ!!
なし崩し的に、そのまま二人でラジオ収録に突入してしまうのだが……。果たして、僕の運命やいかにっ!?
怒涛のハイテンポハイテンション・コメディ、ここに開幕っ。

[tegaki font="poptai.ttf" size="24″ color="red"]あたしにつっこんでくれる人募集![/tegaki]

ひょんなことからアイドル声優の相方として、ラジオ番組のパーソナリティを務めることになった良人の輝かしい軌跡! ……いやいや、なんというドリームなお話でしょうか。

声優ものとしてはすでに、別作品がある中で、同じ土俵、しかも同じレーベル内でネタ被りというのはどうなんだと、いらぬ心配をしてしまいますね。もっとも、別作品は、声優本人の成長を描くのに対して、本作では声優ファンなれどもずぶの素人の主人公が、特殊な性癖(笑)のヒロインの相方として、世間の荒波にもまれて歩いて行くストーリーになっていますが。

まぁ、物語の始まり方事態が突飛ならば展開もなかなか突飛なもので。ツッコミ待ちヒロインというのは結構珍しいんじゃないかという気がしますが、そんな良人のあこがれの声優である音無まどかという彼女のキャラクターが受け入れられるかどうかで、本作の印象っていうのは正反対になりそうな感じ。かくいう私は残念ながら苦手なタイプの性格だったので、傍若無人で上から目線、アゴで良人をこき使う女王様な彼女の言動にぞくぞくすることもなく生暖かく眺めていたわけなのですが。ツン要素が強すぎて近づきがたいんですよ、もうちょっとスキを見せてくださいよ。いや、肌色的な意味ではスキだらけなんだけど。お隣お向かいカーテン引かずにお着替えとかどんだけ誘っているんですか!? ロケーションとしては幼なじみの定番的なものなのですが、関係が上下はっきりしていると、こりゃ拷問だわ……、良人よ、強く生きろ。

憧れとはほど遠い本性を知ってしまった彼女といっしょに、正体不明の名もなきパーソナリティとして番組をこなすも、ネガティブな感想に打ちのめされる展開はお約束ながらもやっぱりきついですね。誰かの挫折する展開は、内面がしっかり描かれるからこそ痛々しいんですが、だからこそ開き直って楽しめばいいというポジティブに自分を持って行くことのできる良人は、偶然の配役にしてもまさにライトスタッフだったんでしょうかね。顔出し公録で応援をまっすぐに受けて、番組を作る喜びを知ってしまった彼は、もう後ろを振り返ることも下を見ることもなく、前を遠くを見据えて素人ならではの無鉄砲さで、まどかに対して小気味の良いツッコミを入れていくのでしょう。好敵手と書いてライバルと読みそうなもうひとりの声優さんもヒロイン的立ち位置で登場しているし、これまた三角関係な展開、期待しても良さげ?

惜しむらくは本編中でちらりと描かれているまどかの秘密っぽいことが最後まで回収されていないんですよねえ。続刊前提の伏線なんでしょうけど、現実を舞台にしたストーリーで、微妙にファンタジーな要素が入っているのがどう転ぶか、気になるところですね。

hReview by ゆーいち , 2010/09/08

彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き!

彼女(アイドル)はつっこまれるのが好き! (電撃文庫)
サイトーマサト , 魚
アスキーメディアワークス 2010-07-10