ソードアート・オンライン〈5〉ファントム・バレット

stars なら聞こう! もしその銃の弾丸が、現実世界のプレーヤーをも本当に殺すとしたら……。そして、殺さなければ自分が、あるいは誰か大切な人が殺されるとしたら。その状況で、それでも君は引き金を引けるか!?

《SAO》事件から一年が経った。ある日。キリトは、総務省《仮想課》の菊岡誠二郎から奇妙な依頼を受ける。銃と鋼鉄のVRMMO《ガンゲイル・オンライン》で突如発生した《死銃》事件。漆黒の銃を持つ謎のアバターに撃たれたプレイヤーは、実際に現実でも《死》に至る……。その不気味な事件の捜査を断り切れなかったキリトは、《仮想世界》が《現実世界》へ物理的に影響を及ぼすことに疑いを抱きつつも、《GGO》へとログインする。
《死銃》の手懸かりを掴むべく、不慣れなゲーム内を彷徨うキリト。そんな彼に救いの手をさしのべたのは、長大なライフル《ヘカート2》を愛用するスナイパーの少女・シノンだった。
新エピソード突入!

[tegaki font="mincho.ttf" size="36″]銃弾飛び交う新世界へ![/tegaki]

新章突入。前巻のあとがきでは雰囲気が大きく変わるみたいなことを匂わせていたんだけれど、舞台となるゲームが変わり、殺伐とした雰囲気の世界で戦うことになったということ以外では大きな変化を意識することはなく、やってることはこれまでどおりのSAOという物語だったかな。

すでに作品タイトルと同名であるVRMMO《ソードアート・オンライン》ムから、ストーリーは大きく離れてきてはいるけれど、主人公であるキリトの並々ならぬ剣へのこだわり、自分のプレースタイルをたとえ銃が主体のゲームであろうと貫こうとする姿勢を見ると、文字通りの剣技で戦い抜く彼の物語という視点から見れば間違ってないなあとか思えてきますね。

いや、それにしても、これまでのデータを封印したというから、反則的な強さは鳴りを潜めるのかと思いきや、まったくそんなことはありませんね! プレーヤーがかけた時間が、そのまま強さに結びついてきたこれまでの舞台となったゲームとは違い、今回のGGOというゲームは、土台となるキャラクターのパラメータと同じかそれ以上に、それを操るプレーヤーの資質が勝利に直結しているようなシステムのようですね。物語の都合と、ゲームシステムの都合がうまく合致して、新シリーズにおいても我らが主人公は、あえて銃に対して剣で挑むというスタイルのくせに、無双状態を発揮できそうな雰囲気ですし。

今回は新しい物語の導入的なエピソードなせいか、物語の盛り上がりはまだまだこれからというところで終わってしまいました。けれど、新しいヒロインのシノンの抱える過去の闇と、キリト自身も忘れていた、かつて背負うことになった罪のリンクが、この先の展開の過酷さを予想させますね。どこまでもついて回る因縁の鎖は、断ち切ることができるのか。自分の過去に押しつぶされそうになるキリトの弱さと、それを乗り越えようとする強さが描かれるエピソードになるのでしょうか?

まぁ、それはそれとして、相も変わらずフラグ立てまくる、ナチュラルな女殺し属性はどうにかなりませんかね!? 本命のアスナさんが、やきもきするのもわかるなあ。本人がその気がないのがまだ救いだけど、現実世界ではどんどん修羅場のボルテージ上がっていってるんじゃないのかとか要らぬ心配をしてしまうのですよ。

hReview by ゆーいち , 2010/09/13

ソードアート・オンライン〈5〉ファントム・バレット

ソードアート・オンライン〈5〉ファントム・バレット (電撃文庫)
川原 礫 , abec
アスキーメディアワークス 2010-08-10