C3‐シーキューブ‐〈11〉

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stars さらばだ、ただの後輩よ。先輩として、お前が幸せな学園生活を送れるよう祈っておるぞ。

桜咲く四月。大秋高校にも新入生が入学してくる。フィアも晴れて進級して先輩になり、すっかり浮かれ気分に。
不良巫女・千早&伍鈴たちとも再会し、さらにはやたらとフィアを慕ってくる元気娘な一年生も出現して、周りはますます賑やかに!?
みんなで花見に行ったり、ミスコンも開催されるという新入生歓迎祭があったりと楽しみなイベント目白押しのなか、新たな危機が迫り――。さまざまな思惑が入り乱れた先にあるものは?
二年生になっても騒がしさは相変わらずな第11弾。

ちいさな幸せを掴むことさえできなくて

物語が始まって、作中では早一年が過ぎました。学園ものは進行の度合いが進級という形で可視化されているので、残された時間の猶予というものもだいたい把握できますね。

さっぱり時間が過ぎない作品も中にはありますが、本作は順調に時間が進んでいるという印象。

登場人物の主要キャラが増えつつあり、春亮たちの進級によって、自然、後輩という立ち位置のキャラも登場するわけで。前巻のトラブルの中心となった千早たちの入学を経て、大秋高校の変人密度はさらに上昇中。先輩の立場になったフィアの浮かれっぷりににやにやしながら、クラス替えで一喜一憂する、いんちょーさんやこのはさんの姿にまたにやにや。ラブでコメな雰囲気は、いんちょーさん=錐霞さんの宣戦布告で一気に進行するかと思いきや、これまた主人公の鈍感スキル全開で割とスルー。いや、春亮自身も意識してないわけじゃないのに、自信が持てないあたり、ヘタれとののしってやっても良いと思いますよ、いんちょーさん! フィアの言うように、割合ハレンチ指数高めな健全な少年なのに、なかなか踏み込んでいけないあたりが青いですねえ。にやにや。

まぁ、そんな明るい雰囲気も、一気に吹き飛ばして怒濤な展開を見せるのはいつものこと。今回はこれまでのシリーズの中でも、かなり重めにやらかしてくれましたね。登場キャラの使い捨てというか、速攻退場はあまりなかった感じがするんですが、今回の容赦のない退場劇はけっこうダメージが。フィアがらみで、彼女にとってもたいせつな存在になるかも知れなかった最初の後輩である夕銘の扱いが、話の展開から想像される部分からやや外してきて、斜め上の役どころで立ち回ったのが意外意外。こういう割と脳天気系のキャラが、こういうヘヴィな扱いを受けるというのはちょっと油断していたのかショックがでかかったですね。そう見せておいて、実は助かるんじゃね、助かるよね? という希望を見事に打ち砕いたまま話が閉じてしまいましたよ。

それは、今回の舞台を引っかき回してくれた蒐集戦線騎士領の騎士団の面子の扱いについても同様で、なんかこの勢力の扱いって容赦なくすり減らされていくなあという印象がさらに強まりましたよ。他の勢力のキャラは再登場の機会に恵まれたりするのに、騎士領という勢力は、それ自身が《禍具》と相容れない理念のもとに動いているからか、まともそうに見えても決してわかり合えることはないのかと思わされます。今回登場した騎士団を率いたリリィハウルにしても、自分の正当性に疑問を抱きながらも、それに勝る《禍具》への憎しみからか、正しくあることよりも壊れ狂うことでその考えから逃避するような強そうで、けれど弱い人物でした。そんな彼女が守ろうとした姫乃との顛末も、報われてほしいというささやかな願いを裏切る形で閉じてしまったし。あの終わり方だと自分一人が命を拾ったとしても、復讐のためだけに生きる存在に成り果てそうな勢いですね。そしてまた体の良い噛ませ犬扱いをされそうで……。

そして、舞台の裏で暗躍していた《竜島/竜頭師団》の2位・ニルシャーキの目的は何なのか。師団を抜けても強さを求める思いに変わりはないのか、今回の事件で手に入れた《禍具》を使って目指すさらなる強さの高みには何があるのか。彼女が手に入れようとする武器は話の流れからするとフィア自身を武器として扱うことなのではないかという予感がしてきますが、それに抗う方法は二つで一つ。敵として倒し、そして、フィア自身が自分の異能を封じ、人となること。

目的は違うようで同じ場所、新しい力を得て、強さを取り戻したかのようなフィアだけれど、彼女はただただおのれの力を忌避して人になることを諦めず。未だ抱え続ける、無限の呪いをどう克服していくのか、あるいは、フィア自身が立ち向かわなければならない最終的な敵というのは、その内に抱えた呪いなのでしょうか。無力になる過程で失われてしまうたいせつなものがあるとするなら、フィアはそれをどうやって守ろうとするのか。力を失うことで目的に近づく彼女が、その過程の中でどうしても力を必要とするというジレンマ。もしかしたら、そのために彼女の周りには、ともに戦ってくれる、ともに笑ってくれる仲間と呼べるひとたちが集まりつつあるのかもしれませんね。

未だ理解しきれない、恋ごころもだんだんと彼女の内を焦がしてせき立ててきているよう。救われ、報われ、望みの叶うときはいつ訪れるのか。その代償がどれほどのものになるのかが、これからも問われ続けていくように思います。

hReview by ゆーいち , 2011/05/01

C3‐シーキューブ‐〈11〉

C3‐シーキューブ‐〈11〉 (電撃文庫)
水瀬 葉月 さそりがため
アスキーメディアワークス 2011-04-08

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    愛があるから辛口批評! 2011年5月21日 at 15:15:09

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