C3‐シーキューブ‐〈12〉

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stars つまり。私は――そうだ。私は、お前を喪いたくない、と思ったのだ。思っているのだ。それだけは、この感情だけは、確かだ。何がどうあっても、私がどんな存在であったとしても、それだけは……!

奈良公園といえばシカ。シカといえばシカせんべい! というわけで修学旅行で奈良京都を訪れたフィアは初めて目にするあれやこれやに大興奮。そして宿ではもちろん露天風呂。女湯では一同入り乱れての肌色祭りが展開される。
そんな修学旅行中、フィアたちは解散したはずのあの組織と再会する。彼らに持ちかけられた取引がきっかけで、フィアやこのはは自らの気持ちに素直に行動し、その想いをもっとも強く発したものが勝利するという戦いに巻き込まれる。それを勝ち抜くために思い浮かべる気持ちとはやっぱり――!?
修学旅行もとっても賑やかでハレンチな第12弾。

そうだ修学旅行へ行こう!

今度の舞台は修学旅行の定番の地、京都・奈良。学生なら誰もが血湧き肉躍る日常とは違う非日常の数日間。盛り上がらないはずがありません。ほら、色恋沙汰とかそういう方面で。

本来なら、免罪符機構インダルジェンス・ディスク回収という目的がありながらも、テンションだだ上がりの春亮やフィアたち一向の名所巡りは楽しげ。いやぁ、大昔の記憶がよみがえるようでありますよ。

そんな中での意外な再会劇は、登場人物たちのみならず、読者の方にとってもあるいみ不意打ちであったかも。ずいぶん前に物語の舞台から退場して、出番などないと思っていたビブオーリオ家族会ファミリーズの残された家族たち、母親役であるアリスや、彼女と共に暮らしているククリの再登場。いや、かつての狂気まみれの言動はなりを潜め、ほんとうに静かに穏やかな日常を送っていたんですねえ。しかし、ここで再登場するというのは、お話の展開的に危険な香りがぷんぷんしてきますが……。

そして、さらに事態を引っかき回しそうな人物の襲来。いや、文字通り彼――闇曲拍明の手によって一筋縄ではいかない免罪符機構入手のハードルがさらに上がってしまって。

けれど、今回のトラブル、強制的とはいえ、春亮と、彼を囲む少女たちの関係を大きく進展させるきっかけになったというのが悩ましいところですね。フィアにとっては今回の箱と鍵と自分の気持ちを巡る狂騒で、よりいっそう人間らしい気持ちを強め、淡いままだった甘やかで優しく温かい感情にようやく恋という名前を与えることができるようになったのかな。それは、この物語を通じて、彼女が望み続けていた人間という存在へ大きく近づいたということであり、祝福されるべきことなんでしょう。意地を張って認めようとしなくても、フィア自身、もはや言い逃れもできず、その気持ちを彼に伝えるのは時間の問題といったところ。いやぁ、ようやく、このなかなか進展しない三角四角関係に大きな変化が訪れる予感ですね!

一方のこのはやいんちょーさんにとっては苦い結果なのかも。とくにいんちょーさん――錐霞にとっては、この事態を傍観するしかできなかった自分の選択をこの先も悔やんでいきそうな勢い。特に終盤で思い切った行動を見せ、大きくリード? といった雰囲気も感じられるのですが、彼女の気持ちは、もういっぱいいっぱいでちょっとしたことで壊れてしまいそうな不安定さも同時に感じてしまいますね。実の兄によるトラブルを、彼女自身の恋ごころをみんなに悟られるのを気後れしたがゆえの事態の混乱、それが遠因となって引き起こされた終盤の大事件もまた、彼女の心の中で大きなしこりとなりそうで、本当、報われないいんちょーさんですね……。

このはに至っては良いところなしどころか、彼女の気持ちまで白紙に戻されたかのような鬼のような展開。もともと、このはという人格と、その裏に潜んでいる本性である村正とは、きわめて危ういバランスの上で共存していたわけで、無理矢理過去の彼女が目を覚まさせられたことで、ようやく「このは」というキャラクターの過去とこれまでに焦点が当てられ、語られる番がやってくるのでしょうか。フィアたちより以前に、春亮と出会い、救われた彼女から喪われてしまった絆。それをどうやって取り戻すのか、あるいは繋がりを再び作り上げるのか、次の展開に要注目ですね。

奪われ、失われてしまったものの大きさを実感しても、決して春亮たちはそれをそのままにしておくなど、良しとはしないでしょう。彼だけでなく、恋敵であるフィアや錐霞も、こんな結末を望んでいないのは明白。人間の思いが、人間にあらざるものの思いが、どんな花を咲かせるか、とくと見せてもらいましょう!

……と、非常に気になる引きで終わった今巻ですが、次は短編集って、ウボァ……!

hReview by ゆーいち , 2012/01/10

C3‐シーキューブ〈12〉

C3‐シーキューブ〈12〉 (電撃文庫)
水瀬 葉月 さそりがため
アスキーメディアワークス 2011-10-08

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