生徒会の十代―碧陽学園生徒会議事録〈10〉

2012年2月11日

stars うん……これは、正直私達全員の、共通した……完全な『私物』だけど……。だけど、遺していこう! これは、この学園の生徒会室に、あってほしいもん!

ようこそ、私立碧陽学園生徒会室へ! 美少女役員四人+おまけ一人、生徒諸君のため、過去を振り返ります。始まりはあまりにも衝撃的だった。「ただの人間には興味あ(自主規制)」……記念すべきシリーズの1巻目でまさかの自主規制。物語は動き出すといいつつも、繰り返される日常。暴走する妄想、青すぎる青春。ここを読んでも内容が分からない作品紹介と、おかげさまでいろいろやらせていただきました。でもあの頃があるからこそ、今がある。何もかもが特別だった十代の日々。終わりじゃない、これは始まり。
じゃあ最後は、せーのでいきましょう。せーの!
「これにて、第三十二代碧陽学園生徒会、解散っ!」

[tegaki font="crbouquet.ttf" color="Salmon" size="36″]さよならは、終わりじゃない[/tegaki]

本編はついに閉幕ですかー。ここまでノリと勢いでやってこられたことにこそ感服ですね。日常系と呼ばれる物語の先駆けながら、打ち切られることもなく見事に卒業という一つのゴール地点にたどり着けたことにまずは惜しみない拍手を!

内容は、今まで通りの短編を挟みつつ、卒業式パートが進行するものだから、しんみりしたりくすりとしたら感情の起伏が激しいことこの上ないですね。卒業、そして、完結という一抹の寂しさを漂わせる内容ながら、それを吹き飛ばそうと空元気にそうあろうとする生徒会の面々がまぶしい一冊です。

そして、主人公・杉崎の決断に対して、生徒会メンバーの女性陣から返答がもたらされる、回答編でもある今巻。ハーレム王ハーレム王と夢見がちな妄想を全開に公言してはばからなかった杉崎が、その意味を見つめ直すのに何巻を要したのやら。一方の女性陣は、もしかしたら彼と出会ったその時から、こういう事態を夢想しながら、彼への想いと答えを暖め続けてきたのではないかという印象を抱きます。

悪友から一転、好き好き大好きモードになりつつも、ノリを変えることなく親友であり続けた深夏。後輩キャラのメリットを活かすどころか、腐女子キャラとして攻略難度の高さを誇りながらも微妙な両想い状態を維持し続けた真冬。好意を抱きながらも、彼の前ではクールなキャラを維持することに必死で、むしろ時たま見せる乙女な仕草の可愛さが反則的な知弦さん。そして、最強のお子様生徒会長にしてマスコットキャラ、なびいてるようでなびいてないこの距離感をどうやって縮めるの? だったくりむ会長。それぞれの卒業式でのスピーチを通じて感じられる学園での思い出は、その中に名前があってもなくてもやはり杉崎という存在がいたからこそだと察することができます。生活の中心が生徒会、舞台の中心が生徒会室、いつもそこには彼と彼女たちがいた、だからこそ語り尽くせない思い出たちの積み重ねは、涙のようにこぼれ落ち、そのきらめきをみんなに感じさせるのでしょう。

最後の場面だからこそ吐露することができた本音。「ずっといっしょにいたい」「離れたくない」そして「おめでとう」の気持ち。ここで立ち止まるぬるま湯な永遠ではなく、しっかりと、あるいは否応なしに卒業という区切りを付けられることは、碧陽学園の生徒たちにとってはどんな想いなのでしょう。昨日まで続いてきたドタバタが、新しい季節では見られなくなることを実感して、はじめてなくなったかつての楽しさに気付くのでしょうか。それとも、現生徒会以上のトラブル吹き荒れる学園生活に振り回されてそれどころじゃなくなってしまうのでしょうか?

幸いにして、この物語は、杉崎を主人公としてもう少しだけ「今から先」が見られるようですね。今期の生徒会以上にくせ者揃いのメンバーを相手に、悪戦苦闘する杉崎の物語になるのか、あるいは想像もしていないような内容になるのか、あとがきを見る限りでは斜め上の展開になりそうで、これはひさびさに作者のシリアス方面が見られたりするのかなと期待もあったりしますね。あと、番外編も残ってるし、コラボ企画とかも進行中、アニメも再び放送と、本編は卒業を迎えても、この作品世界はまだ広がる余地を残していますね。

ひとはずは、楽しい結末をありがとう。そして、まだまだこれからも続いていくみんなの未来がどこまでも笑顔に満ちたものでありますように。

ハッピーエンドは正義です!

hReview by ゆーいち , 2012/01/28