グッドナイト×レイヴン

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stars ――嫌な夢をみている気分にならないか?

息をするようにスリを行う無気力少年・鈴人。女装癖のある美少年・遊。スピード狂の無口美少女・倉日。知り合いですらなかった3人だが、怪しい男・ワタリヤにはめられ急ごしらえの怪盗チームとなる。
一回7万円、実働時間は1時間以下。微妙にイリーガルな匂いのする報酬とスリルに釣られ、盗みを重ねるうちに相性最悪だった3人の距離も近づいていくが、同時に不可解な盗みに隠された意味にも気づきはじめ……。

断ることなんて、できない

宝島社から献本いただきました。

手癖の悪さそのままに、見ず知らずの男から金をスってしまった主人公、鈴人が奇妙な同年代の少年・少女とともに危ない橋を渡らされるお話。

まず最初に、危険はない、リスクは最小限とかいいながらも、不法侵入上等な条件を突き付けてくる怪しい男・ワタリヤを少しは疑えよと言いたくなる(笑) いや、簡単に七万円という大金が手に入るなら、ちょっと危ないバイトくらいに思って手を染めるのも一夏の経験としていいのかなあ……とか思っているようだけれど、それ、甘いですから!

まぁ、集められた鈴人、女装少年な遊、とらえどころのない少女、倉日の三人が三人とも、どこか後ろ暗い事情を抱えているんで、それが鎖になって逃げられないような攻め方をしてくる辺りもいやらしいんですが、見た目も言動もうさんくさいのに、美味しい話に手を伸ばしてしまうのはそれぞれ事情があるからなのか。

主役となる三人の少年少女の、それぞれの掘り下げは意外なほどにあっさりしています。みんなが大金を手にすることを欲する事情を、あるいは危険な場に身を置くことを欲する事情を抱えているような雰囲気はあるのに、彼らを十分に理解させようとするほどの描写がないんですよねえ。見た目的には一番インパクトのある遊については家庭事情から結構踏み込んでいるような感じはするんですが、やはり男キャラとか無口系キャラとか人気がすぐには出そうにない人物は後回しということなのか。

とはいえ、そういうあっさりさと、お互いの事情に頓着をしない三人の言動が相まって軽いようで不思議な雰囲気の話運びです。基本、淡々と危ない橋を渡っていく(妙な表現だなあ)彼らですが、中盤で明かされるファンタジーな展開にもあんまり動じていない。彼らにとっての現実感というのがどこにあるのかつかめないふわふわした感触が、今どきのこの年代にくすぶっている感情なのかなあとかいい年した人間は思ってしまいます。

三人を巻き込む元凶となるワタリヤにしても、ドライな関係をお望みなようで、どこかの誰かのように契約契約とうるさくなくて、止めるなら止めろとあっさりした態度。いつでも繋がりを断ち切れる関係を維持するために深入りしない態度を取っているのに、彼らを見守る位置にいたりと本心のよく分からない人物ですね。物語の根幹となる彼の動機にしても、本人が語ったことではない伝聞で明かされるだけに、真実がどうであるかが判然としない点も含めてもやもやしてしまいます。

終盤では一定の種明かしがされてはいますが、主人公の鈴人の無気力さがたたってなのか、盛り上がりにいまいち欠けてしまう感がありますね。真に危機的状況で絶体絶命の窮地、とまでいかないのですがそれなりのピンチであるのに必死さが感じられないというか。もともとそういう性格として描かれていて、何事につけてもどうでもよく流されている雰囲気の彼なので、そういう部分では煮え切らないなあなんて思わされました。

プロローグとエピローグで対を成すような描かれ方をしている夢の世界。悪夢ではじまり、悪くない夢で閉じる物語。現実と夢の世界どちらがより悪いのかとか思わされるような構成ですが、彼が本当に望んでいるのは何なのか、語って欲しいと思いますね。

ディスコミュニケーションな状態から、それなりに友人に近い状態にまで望まずともなっていった鈴人たちは、これからもこんなお仕事を続けるのでしょうか。続きがあるのなら、それぞれのキャラクターに焦点を当てた物語を見てみたいと思いました。

hReview by ゆーいち , 2012/08/07

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