バカとテストと召喚獣〈10.5〉

2013年4月18日

stars うんうん。正直なのは良いコトよ、アキ。それじゃ、正直に言ってくれたご褒美に“痛い痛い”してあげるわね。

進路希望調査の記入内容に迷う明久・雄二・ムッツリーニの三人に、学園長が提案したのは召喚者の未来をシミュレートする新たな実験――「間に合ってます」「なんだいその反応!?」(正しい教師とのやりとり)。とはいえ興味をそそられたFクラス面々は早速試してみることに……。『僕と未来と召喚獣』他、明久と雄二を襲った衝撃の人格入れ替わり事件の顛末『僕と雄二と危ない黒魔術』など全4本でお贈りする青春エクスプロージョンショートストーリー第5弾!

10巻がアレな感じだったバカテスですが、クライマックス直前で箸休めとばかりの短編集。

だけど、長編の微妙にシリアスな空気より、短編で勢い任せにバカをやり抜いてくれる展開の方が、面白いというのはやはりギャグ作品の宿命なんでしょうか。今回も、最後の過去編以外は、もう、バカでバカでしょうがないなあとにやけてしまうような笑えるお話でしたよ!

僕と兄さんと謎の抱き枕

まさかの久保君の弟視点。いや、弟の目から兄を見たら道を踏み外してしまった彼を、ノーマルの道へ引き戻そうとするのは至って正常な反応なのか?

メインキャラだけでなく、その親からきょうだいに至るまでわりとぶっ飛んだ性格をしているのが残念すぎるバカテスワールドですが、彼、久保良光君の良識的な性格は、逆の意味で異端児なのではないかと不安になってしまいますね。

弟君の視点からF組を見るとやはりとんでもない連中だというのがよく分かる(笑) 日常的に幸福そうな誰かを血祭りに上げようとかどんな秘密結社だい!? そんな悪の組織に目を付けられてしまった彼も、結構な主人公体質かもしれませんなあ。そのお相手のヒロイン役になりそうなのが、ムッツリーニの妹君とか、世代を超えて広がっていきそうなバカテスワールド。

今の主役達が舞台を降りても、このおバカな世界観は当たり前のように続いていくのですね。

僕と雄二と危ない黒魔術

ギャグ作品の定番、入れ替わりパニックキター!

話が進むにつれて誰が誰だかわかりにくくなるのはご愛敬ですが、これこそアニメとか漫画とか映像付きのメディアでドタバタやるのを見てみたいなあ。描き分けとか声優さんとか大変だろうけど(笑)

挿絵がサービスカット多めで眼福ですが、中の人がああなっているのを想像するとまさにカオス。止めどなく人格が入れ替わって収集付くのかと思っていたら、あっさりと解決。なるほど、誰か蚊帳の外にいたかと思ったらそういう役割なのね。むしろ、彼なら誰の中に入ってもそつなくこなしそうで、そうなったらさらにこの混乱は取り返しが付かないくらいになっていたとか、そういう長編向けのネタとかどうよ?

僕と未来と召喚獣

これまた定番的な未来の自分との邂逅ネタ。

あくまで確定した未来として描くのではなく、現時点からの可能性を見せてくれるということでこの先の展開次第でいくらでも変わるよというのは良し。

大人になった明久の、余裕たっぷりの態度がすごいな……。いったいどんな修羅場をくぐったというのか……! というよりも、現時点での彼がどういうわけかバカすぎるだけで、小学校自体の彼とか今よりずいぶんまともに見えてしまうのは一体なにがどうなっているの!? そんな自分に微妙にジェラシっちゃう明久もなんかかわいいし、主人公にしてヒロイン(アキちゃん)な立場は健在ということか。

逆に救いようのなさげな未来を見てしまった雄二は、心折れずにいられるのだろうか。ほんの数行の描写だけで「ああ……うん」とか思わされてしまうあたり、多分ほかの未来がないんじゃないかなご愁傷様。

男と女どっちもいけそうな秀吉だとか、素敵な女性に成長する美波とか姫路さんとか、良い感じの挿絵で満喫させていただきました。

作者自身が「挿絵が見たかったから」と言ってはばからない一発ネタですが、良いものを見せていただきました。

私とウサギと仄かな初恋

あ、明久が賢く見えるっ……!?

いや、これ精神年齢おかしいですって。何でこんなに大人な対応しているの、小学生自体の明久。これはきっと姉の仕業に違いない! いったいどんな地獄を見て心が壊れてしまったのか……(笑)

まぁ、恋する乙女、姫路さん視点での回想エピソードなので、多分に美化されている可能性もありますが、こんな幼い頃からラブな雰囲気にひたっていたら、ひたすら一途に想い続けるようになっても当然だなと思わされてしまいますねー。

むしろ周囲のいじめが本編の世界に比べて妙になまなましいだけに、彼女の境遇は割と真剣にかわいそうになってしまいますが、こういう過去があって、ずっと明久を見続けていたから、今の姫路さんがこんなにも残念……もといかわいくなったと、そういうことですよね、そうですよね?

ここにきて、彼女の初恋エピソードを持ってくるってことは、本編の結末も姫路さん有利か? とか考えちゃいますけど、綺麗に完結させるにしてもその先を想像させる余地を残すにしても、明久を巡る恋のバトルの決着が付かない可能性も十分にありそうなんだよなあ。まぁ、そういう落ちの付け方の方が、どちらか一方のファンが残念な思いをしないで済むという利点はあるわけで。姫路さんにしても美波にしても、明久との出逢いと彼との関係を積み重ねてきた過去がとても大切な思い出だというのがこれまでに十分に描かれてるわけですから、どっちも幸せに……とか願ってやまない、そんな気持ちもくみ取ってほしいかも。

はっ、そうか、久保君のように法律を変えるために明久が頑張るってのはどうよ? ……いや、姫路さんの方がずっと可能性あるは、それは。

hReview by ゆーいち , 2012/10/20

バカとテストと召喚獣〈10.5〉

バカとテストと召喚獣10.5 (ファミ通文庫)
井上堅二 葉賀ユイ
エンターブレイン 2012-09-29