放課後バトルフィールド

stars なんだか無性に嬉しかった。相手を倒した喜びじゃない。自分の行動が結実した充実感だ。そうか。これか。これなんだ。サバゲーの魅力って、対戦じゃない。自分を確かめることなんだ。

「なんなんだよ、これは!?」
――俺、牧島カヲラは最悪の一日を過ごしていた。
『閃紅の魔女』九段下ホマレに無理矢理入部させられ、やってきた放課後は弾丸の飛び交う戦場だった。
電動ガン片手にお金を稼ぐ異空間サバイバルゲーム『放課後バトルフィールド』、それは高校生達の楽園であり戦場――。
青春疾走サバゲーエンターテイメント、問答無用に状況開始!!!!

いや、むしろ IS の続きをだな!

著者紹介で自信を問題児と称するなどのっけからテンションが不安でしたが内容もまた……。各所のレビューで酷評されていましたが、さすがにアンチ騒ぎすぎじゃね? と疑っていた部分もありましたが、うん、だいたい合ってる、という残念な感想に至ってしまいました。

サバゲーを題材にした作品を期待しちゃいけないんですかね? あくまでもラブコメを彩る要素としてサバゲー部という舞台を設定したような印象です。話の流れ的にもちょろい女の子たちが主人公に惚れて、けど、鈍感な主人公はその好意に気付かずにヒロインたちと読者をやきもきさせる、お家芸的な展開。IS ではキャラの魅力が発揮されていたおかげか萌え成分としてはかなりのもの――個人的には燃え要素もなかなか――だったんですが、本作においてはキャラの配置がほとんど過去の作品と変わらないせいなのか、前シリーズの後半で感じていた展開のワンパターンさが目についてしまうという事態に。

ところどころでキャラクターがかわいいなあとか思わされる部分もあるにはあるんですが、話の展開が導入も導入、これから風呂敷を広げていきますよという気が満々の説明部分の多さで、作品世界にひたる以前に微妙に飽きが来てしまうというか。サバゲー未経験者からすると「ふーん」と思わされる説明もあるのですが、それも経験者のツッコミを見ると信用しちゃいけないような誤りもあるようだし、なかなか扱いが難しいジャンルをネタにして苦労してるよなあとかこの先の展開が心配になりますね、描写的な意味で。

個人的には、サバゲーという現実にある競技・遊びをネタにしながら、その主戦場が仮想空間と設定したあたりに、実際のプレーヤーからの内容に関する指摘をフィクションですで避けようとした意図があるんじゃないかと勘ぐってしまったりと、まっすぐにサバゲーを描くんじゃなくあくまでネタで使おうとしてる姿勢が疑問に感じてしまうのかもしれませんね。

コメディ色を出そうとして結構な量で仕込まれているパロディネタも、元ネタの開陳とあわせて行われているせいで冷めちゃうんですよ。こういうのは、さりげなく入れるか、さらなる物量で押し切るかしてくれないと寒いだけです。これ、発行当時に放送されているアニメネタとか仕込んでるけど、続刊が出たときに放送終了していたとしたら旬を過ぎたネタを延々と続けないといけない苦行が待ってると思うんですが……。ギャグ作品でもないんだから、こういう要素は抑えめにしておいた方が良かったんじゃないですかね。各人がジョジョは第何部派とか、プリキュアは何世代目派とか、ガンダムは何世紀派とか……いや、別の意味で痛いな、これは。

うーん、なかなか良かった探しがしづらい作品ではありますがキャラはちょろい感じなので IS の後半のような展開に早いうちにたどり着ければ好きな人は一定数付いてきそうな気はしますが、前シリーズを微妙な形で投げ出してる印象を持たれてると、純粋なファンというよりもネタ的な意味で手に取る人の方が多いのかなー。とりあえず、次巻が出るならまた読んでみて追いかけるかどうか判断という感じですね。

hReview by ゆーいち , 2012/10/21

放課後バトルフィールド1

放課後バトルフィールド1 (講談社ラノベ文庫)
弓弦 イズル 美和 美和
講談社 2012-08-09